貴女、クチナシですね ページ11
『なに、これ。』
開かれた扉の先にあったのは立派な仏壇とそこに飾られた私の写真。
どんなバカだって分かるよ。これは、
『遺影…？』
いやいや、そんなはずないよ。だって今実際私生きてるじゃん！シッマともいっぱい話してたし、ほら！あいつ霊感無さそうじゃん！私が死んで幽霊になってたとしても説明つかないよね？
ほら、足だって…！
『……なんで？』
声が震える。
数日前までちゃんと見えていたはずのつま先が薄らと透けてフローリングが見えていた。嫌だ、いやだよ。
混乱する頭の中に、いつか出会った髪の長い女の人の言葉が過ぎった。
“貴女、クチナシですね。”
あなた、口無しですね
死人に、口無し。
あぁ、そっか。あの人が言ってたのはそういう事だったんだ。良いように解釈して変に舞い上がっちゃった私が馬鹿だったんだ。
思えばおかしな事ばかりだったのかもしれない。外に出た時、通行人に私のことを見る人はいなかった。いつも優しくしてくれてたおばあちゃんに挨拶をしたのに返してくれなかった。そもそも公園のベンチで起きる前の記憶が無いことからおかしかったんだよ。
シッマは、知ってたのかな。いや、知ってたから最初あんなにギクシャクしてたんだろうな。
ご飯食べられるのかって聞いてきたのは私に実体があると思わなかったから。
体温測ってって言った時微妙な顔をしたのはきっと体温なんてなかったから。
私が気づかなかったのは、全部、ぜんぶ、
『シッマの、優しさのおかげ…？』
堪えていた涙がポロポロとフローリングに落ちていく。
その先を見ることは出来なかったけど。だって、濡れていなかったら確定しちゃうじゃん。
私が死んだ人間なんだって。
『何が優雅だよ…何が幸せを運ぶだよ…』
運んだのは厄介事だけじゃんか。ここ数日で私がシッマに出来たことなんて何も無い。
『ごめんね、シッマ…』
夕暮れの赤い日差しが差し込むこの部屋で、動くことも、消えることも出来ないまま私は自分の遺影の前で泣きじゃくり続けていた。
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紗音(プロフ) - ゼロさん» コメントありがとうございます！そこに関しては読者様のご想像にお任せ…というつもりでしたが私の中では｢お前は消えてくれるなよ｣と言わせてました！これからも頑張ります〜！！ (2020年8月10日 1時) (
レス) id: 49310bd778 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 質問なんですが、最後の番外編の夢主が聞き取れなかったknさんの言った言葉がすごい気になってしまって、色んな言葉が当てはまるので、もし決めてあれば教えていただきたいです！ (2020年8月10日 1時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - ｷﾞｬｱｱｱｱ素敵な神作品ありがとうございます！まじ感動…knさん…心あるやないか！(似非) これからも頑張ってくださいいい！！(質問があるので続きます) (2020年8月10日 1時) (レス) id: f5adb14e6d (このIDを非表示/違反報告)
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