【◇】ないものねだりな俺らの恋２

98 ページ48

.


東条


「と、東条君…？」

「うん、俺。ビックリした？」


次の客が来てしまうかもしれないのに、この手を離したくなくて会話を終わらせないようにする。


「お化けが出るって分かっててもやっぱりドキドキしちゃうもんだね。」


なんなら別の意味でもドキドキさせるようになりたい。

俺に対してのドキドキを。


「因みに、もう少し進んだ所で貞子役の子が這って追いかけてくるから気をつけてね。」

「え…嘘。」

「怖い？」


そんな質問しなくても引き攣っている顔を見れば、本気で怖がっているのが窺えて。


「……何とか頑張るね。春乃においてかれちゃったから早く追いかけないと。」


吉川も一緒だったのか。


「一緒に出口まで行くよ。」

「いやいや…！！流石にそれはダメだよ！」


役目を放棄するのは良くない事だけど、Aを目の前にしたら何振り構っていられない。

少しでも長くAと一緒にいたい。


名残惜しくて手を離せずにいると、だんだんと聞き覚えのある騒がしい声が聞こえてきた。


「うわああああ！！！！！！！！！」

「お前どんだけビビってんだよ！！うるせえな！」


今一番会いたくなかった信二と沢村が俺達の存在に気づくと立ち止まり、一瞬だけ変な時間が流れた。


.

99→←97

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す