【◇】ないものねだりな俺らの恋２

71 ページ21

.


「…沢村も一緒だったんだ。」


二人きりじゃないのに安心したのか、ポツリとそう溢した後は何も言ってこなくなってしまった。


さっきまで莉子とも会話していたのに、今じゃ静まり返って変に緊張感が走る。

莉子も私と同じ事を思っているのか、この空気を読んで何も話さなくなってしまった。


「あっ下敷き…！ごめん、図書室行って取ってくるから二人は先に教室行ってて！」


沈黙の中、抱えていた教科書を確認していたら忘れ物に気づき慌てて来た道を一人戻って行く。


あの状況で莉子をあの場に置いてきてしまったのは申し訳ない気もするけど…

でも東条君の怒りの矛先は多分私だから、私がいなくなったらいつも通りに戻るはず。



…あった。

図書室に着くとさっき自分が座っていた椅子の下に落ちてしまっていた。


授業が始まりそうだから早く戻らないと…

そう思って、図書室を出ると同時に東条君の姿があったから驚いて小さな悲鳴が出てしまった。


「下敷きあった？」

「う、うん。どうしてここに…？」

「Aともう少し話がしたかったからさ。ごめん、それで追いかけてきたら驚かせちゃって。」


それって金丸君とのやり取りを聞きたいのかな、なんて変に一人で勘繰ってしまう。


.

72→←70

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す