【◇】ないものねだりな俺らの恋２

53 ページ3

.


東条


「え？どうしたの？」


それはこっちのセリフだ。

まさか沢村のことが好きなのかって焦る俺とは対照的にAは不思議そうな顔をこっちに向けてきて。


「……え、沢村のことが好きなの？」

「うん？好きだけど？」


何かで頭を叩かれたような…そんな衝撃を感じ、情けないけど言葉が出てこない。



「…え？東条君も沢村君のこと好きでしょ？」

「………なんだよ、驚いた…。」


どうやら友達としての発言だったらしく、その言葉を聞いた途端に力が抜けていくのが分かった。


「人としてすごいなって思うんだ！一緒にいるとプラスになるっていうか…パワーを分けてもらえる！！」


別に俺だって沢村のことすごいなって思うし、いい奴なのも分かるし好きだけどさ…何か…

ここまでベタ褒めしてるのを見るのは面白くない。


「……確かにいい奴だよね。」

「うん！」


…なんだかなあ、二人でいられるのが嬉しいはずなのにモヤモヤしてしまう。


「東条君も！今日、最後の試合の時に大声で走れって言ってくれたでしょ？」


まさか自分の話になると思わなかったから少し驚きはしたものの、その場面を思い出して頷いた。


「あの時すごい必死だったんだけど東条君の声が聞こえてきて嬉しかったの！応援してくれてありがとう！」


そう言って自分に向けられた満面の笑み。


…何だよこれ、ずるい。

さっきまで嫉妬で荒んでいた心が嘘みたいに綺麗になっていくのを感じる。


.

54→←52

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す