【◇】ないものねだりな俺らの恋２

59 ページ9

.


金丸


静まり返った部屋の中で、カリカリと文字を書く音だけが響いているとーー


「わっごめん！」


突如Aのスマホが鳴り、誰かと電話をし出した。


「ちょっとだけ外出てくる！」


そう言い残し部屋を出た後、気が抜けたのか沢村がデカいため息をついて机に倒れ込んでしまった。


「……もうだめだ。頭がおかしくなる。」

「大丈夫だ、お前はもうおかしくなってる。」


いつもの返しに文句を言ってこないのを見ると相当疲れているのが分かる。



「少し休憩するか、何か飲み物でも飲むか？」

「…俺、オレンジジュースで。」


………俺に買ってこいと？

ムカつくが、こいつの頑張りに免じて仕方ねえと重い腰を上げて部屋を後にする。


つか、金は？

勉強教えてやってんのに何で俺がジュースまで奢んねえといけねえんだよ。


ブツブツ文句を言いながら自販機に向かうとAが誰かと話しているのを見かけた。


「えーじゃあまだ帰らないの？」

「うん、ごめん。まだ全然終わってなくて。」


名前は知らねえが、あいつがよく一緒にいる奴との会話が聞こえてくる。


「東条君に教わってるの？」

「ううん、金丸君。沢村君も一緒なの。」

「えーー！あの感じ悪い人？」


あ？と思わず声が出そうになった。


.

60→←58

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す