【◇】ないものねだりな俺らの恋２

100 ページ50

.


東条


困った顔をさせたかったわけじゃなかったのに、でもこの状況じゃ無理もないか。

困惑気味のAに声を掛けようとした途端、勢いよく貞子役の子が追いかけてきて。


「いやーーーー！！！！！」


今まで聞いたことがないようなAの全力の悲鳴に驚いてしまっていたら、今度は凄い力で引っ張られてしまい。

呆気なく出口付近まで辿り着いてしまった。



「ご、ごめんね東条君…！痛くなかった？」

「全然大丈夫だよ。Aの方こそ大丈夫だった？」

「私は何ともないよ。結局送ってもらっちゃってごめん、ありがとう。じゃあそろそろ行くね！」


つい行かないでと口走りそうになる。


「あー！Aいたー！！」


出口で手を振る吉川を見て小走りで俺から離れようとするAの肩をふいに掴んでしまった。


「わっ…な、何？どうしたの？」

「Aのクラスに遊びに行くね。」

「うん、待ってるね！」


これじゃあいつもと変わらない会話になってしまう。


「うん、Aに会いに行くね。Aだけに。」


わざと意味ありげな言葉を耳元で囁くと、驚いた顔で振り返ってきたから笑って手を振りその場から離れた。



はあーーーーー。俺、頑張ったよな。

時間差で自分の行動と言葉に対して恥じらいが出てきて顔が熱くなってしまう。


自分のクラスがお化け屋敷でよかった、こんな顔恥ずかしくて誰にも見せられない。


.

この小説の続きへ→←99

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す