友達【茅ヶ崎至】 (ページ42)

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静かだったページ42

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電話の相手は病院の方だったらしい

「茅ヶ崎くん、どこの病院ですか！？」

私は考えるよりも先に、電話に出た女性社員さんにつめよる

震える声で、病院の場所を教えてくれた

私はお礼もそこそこに部署を飛び出し、階段に向かう

病院にいる

と聞いて、真っ先に浮かんだのは、交通事故

電話に出た社員さの狼狽え方が、尋常じゃなかったから、ますます不安になる

昨日から、ついてないことばかりで

今日はいいことあるかなって、思ってたのに

「……最悪すぎるよ…こんなの……」

視界が歪む

ゴシゴシと目をこすって、涙を拭う

どうか…何もありませんように…！

1階まで降りて、会社を出ようとした、その時

「Aさん！」

車に乗った、卯木先輩に声をかけられた

「乗って！」

私は、半ば反射的に、卯木先輩の車に乗る

扉が閉まるのと同時に、車は猛スピードで病院に向かった

「劇団の方にも連絡あったらしくて、さっき俺のスマホに連絡来た

Aさん、まさか病院まで走っていくつもりだったの？」

「…何も、考えてなく……」

「…待ってて正解だったな」

はぁ、と運転席でため息を漏らす卯木先輩

私はすみません…と小さく謝る

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「…待ってて正解だったな」

「……すみません」

Aさんは手を膝の上で力強く握っている

口からは

「……大丈夫…大丈夫…大丈夫…大丈夫…」

と小さく呪文のように大丈夫が繰り返される

「…病院に着いた時、茅ヶ崎にそんな顔で会うつもりか」

「…え…？」

「安心させてやるんだろう。そんな顔じゃ怖がられるぞ」

窓ガラスで自分の顔をみるAさん

「…確かに…これじゃ、怖がられますね」

はは…

と乾いた笑いをこぼした

「茅ヶ崎に会った時、どんな言葉をかけてやれるか考えておけ」

「…はい」

俯くAさんに、これ以上、どんな言葉をかけていいかわからなかった

その後、病院に着くまで車内は驚くほど静かだった

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