友達【茅ヶ崎至】 (ページ35)

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仕返しだページ35

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帰り

「…うっそ」

会社を出ると雨が降り始めた

次第に雨足は強くなり、気付けば土砂降り

傘を買いに行こうにも財布を忘れたため買えない

雨が弱まるのを待ってみるけど一向に弱まりそうにない

むしろ激しくなるばかり

「…走るか」

駅まで走るしかないか

そう思い、私はカバンを抱える

「…すぅ……はぁ…」

ゆっくり、深呼吸をし

大きく1歩、踏み出す

「待て待て待て」

2歩目を出す前に、誰かに肩を捕まれた

「この土砂降りの中、走って帰るつもり？」

「茅ヶ崎くん…！」

「俺今日車で来てるから、乗って帰りな」

「え、でも、悪いよ…」

「財布忘れたんなら傘買う金もないんだろ」

図星

鋭いね、茅ヶ崎くん

「それに、こんな雨の中走って駅向かおうとするバカ、ほおっておけないし」

「バカって酷くない！？」

「いいから、行くよ」

私の返事を聞かずに彼は先に行く

慌てて彼の後を追う

隣に並んで、お礼を言う

「茅ヶ崎くん、ありがと」

「いいよ別に」

「………」

「元気ないね、どした？」

「あ、いや…なんか、今日、悪いことばっかり起きるなって思って…茅ヶ崎くんにも迷惑かけまくってるし…」

「だーかーら、気にしすぎだって言ってる」

「ちょっ！？」

茅ヶ崎くんが私の足を軽く蹴る

なにすんの！？

と思って、彼を見上げると

「俺は別に、迷惑なんて思ってないけど？」

微笑みながら私を見ていた

そんな顔、してると思ってなかったから

驚いた

「なっなんっ、なんっ、～～～～～～！！」

ポコポコと彼の腕を殴る

「なんで俺殴られてんの！？」

「茅ヶ崎くんの癖にそんな顔するから！」

「どんな顔だよ！」

「もーー！これからもっと迷惑かけまくってやるから！」

あんな表情見せられて、ドキドキしないわけがない

心臓が、雨音に負けないくらい鳴っている

頬も、心做しか熱い

この感情がなんなのか、私は知っている気がする

でも、知りたくない

彼とは友達の関係でいるのが1番心地いいから

まだ、知りたくないんだ

「覚悟してろよ！！」

ドキドキさせた仕返しだ

これからもっと迷惑かけまくってやる

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