戴きます。〈文豪ストレイドッグス〉 (ページ10)

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冬の太宰ページ10

バタン。

探偵社のドアが勢いよく開き、真っ青な太宰がのそのそと歩いてきました。

「太宰。随分と涼しそうだな。」
「冬の入水は身体に堪えるね……。」

Aは震える太宰の肩に毛布をかけ、タオルで太宰の髪を拭いています。こんな状態になる太宰は冬の日常みたいなもので、Aはさほど気にしていません。

国木田は自らの予定を乱されることに堪えられず胃をやられてしまうだろうと、太宰の世話はAが進んでやっています。

「いつも悪いねA君。」
「気にするな。これが日常みたいなものだ。」
「君が女性であれば入水に誘ってるとゆうのに……。」

太宰は惜しいというようにAのことを見ました。Aはそんな太宰を無視しています。

「ところで書類は終わったのかい?」
「とっくに終わってる。」
「今まで何をしていたんだい?」
「太宰を待っていたんだ。」
「な、なるほど……。」

Aの言葉に、流石の太宰も反応が鈍ります。少し顔が強ばっています。

国木田は、太宰とA、どちらといる方が予定を乱さずにすむだろうと考えました。

太宰は論外です。Aもどちらかと言えば論外なのでした。書類仕事は片づきますが、Aには思考を乱されます。

「論外ばっかりだ……。」

頭を抱える国木田を、太宰とAはじっと見つめていました。

「国木田君がまた悩んでるね。」
「国木田は真面目だからな。」
「悩みすぎじゃないかな?」
「悩むことをやめたら人間じゃなくなる。」
「そうかね?」
「まぁ限度もある。」

太宰とAは笑いながら話をしています。

この仕事について早一週間。驚くほどAは探偵社に馴染んでいました。Aを気味悪がっていた人たちは、既にAの話し相手と化していました。

馴染むのはいいのです。ですがあまりにも馴染むのが早いもので、みんな少し違和感を感じていました。

太宰なんかは最初、Aがどこかのスパイなのではないかと疑いましたがそんなことはありませんでした。

江戸川はその件ついて、一切触れる素振りを見せません。

なのでみんな安心しているのです。

「みんな笑って幸せそうだな。」
「きっと幸せなんじゃないかな。」
「太宰はいつも笑っているから、わからないな。」

Aと太宰は笑って話をしています。