魔法の写真機 ページ21
昼休憩。Aは自分の写真機をじっと見つめていました。
「写真機をそんなに見つめて、どうかしたんですかAさん。」
「賢治……。いや、考え事だよ。」
Aは宮沢に自分の悩みを打ち明けようかどうか、一瞬悩みましたが、これは自分の問題だと思いました。
「その写真機、あまり見たことのないものですが、珍しい写真機なんですか?」
「いいや。これはポラロイドといって、どこにでもある普通の写真機だよ。」そう云って、Aは宮沢をぱしゃりと撮りました。
宮沢は目をぱちぱちとさせています。
「お世話になった人のおさがりなんだ。とは云っても、要らないからやると云われて持たされたものなんだがな。」
「それにしても大切そうですね。その人ってどんな人だったんですか?」
「自分の考えは曲げないし、退くことを知らないし、自分に合わないと思ったらすぐ怒るし……。でも優しい人だった。」
「すごい人だったんですね。」
「あぁ。」
「もういないけどな……。」と呟かれた言葉は、宮沢の耳に拾われることはありませんでした。
出てきたフィルムから、先ほど撮った光景が浮かび上がります。
「すごいですね。僕が写ってますよ。」
「写真だからな。」
「写真を現像するには、フィルム屋さんへ行かなくちゃ駄目って国木田さん言ってました。」
「魔法みたいだろ。魔法の写真機なんだよ。」
そう云ったAは、誰かの記憶を思い返していました。
それは幼い頃の自分の記憶でした。
「子供だったんだよ。こんな言葉を信じるくらい。」
こどもだった。
「じゃあAさんは魔法使いですね。」
「私の教育係が君でよかったよ。」
「僕もAさんで嬉しかったです。」
「うん。ありがとう。」
幸せだと思った。ただ人と話すことが。
先生の影響で自分は、写真を撮ることが趣味になった。他にすることなんか無かったので、必然的なことであったのだが。
「そろそろ戻りましょうか。襲撃の後片づけはまだ続きそうですから。」
「また事務所がペンキ臭くなるのか……。」
「コンクリート臭くもあります。」
「あぁ……。早く戻って片づけよう。」
「そうですね。」
撮った写真を鞄にしまって、二人は牛丼屋を後にしました。
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えころじぃ(プロフ) - すごい好きです!更新楽しみにしてます! (2018年11月28日 21時) (レス) id: f048ef9aab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮沢はしじ | 作成日時:2018年8月21日 19時