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入社試験(四) ページ17

Aは写真機を手に持ち、立ち上がりました。

「どうして江戸川の引き出しの中に、私の写真機があるんだ?」
「それは、A。乱歩さんは……。」

まさか見つけられるとは思っていなかった太宰は、言い訳を考えましたが、言葉に詰まるばかりです。

何とかして名探偵をフォローしようと思いましたが、そんな時に限って、よい言葉が見つからないのです。

「江戸川が私を嫌っていることは知っている。だがこんなことは間違いだと思わないか?」
「いや、乱歩さんは君をだね……。」
「しかも写真機は直っているじゃないか。どうして渡してくれなかったんだ。」
「……。」

太宰はついに黙るしか出来なくなったようです。何が何なのかわからない国木田は目を回しています。

「きっと乱歩さんには何か考えがあったんでしょう。そうでなければこんなことをする必要がないじゃないですか。ね?」

宮沢がAの腕を優しくさすりました。しかし怒りが多く募っているAは、そのような言葉を素直に聞き入れられませんでした。

「こんなことをする必要?理由?そんなの私が嫌いだからに決まってる。もううんざりだ。」

Aは宮沢の手を振りほどき、写真機を持って探偵社を後にしました。

社内は凍りついています。宮沢は腕を振りほどかれたことにショックを受けていますし、国木田は太宰に掴みかかり問い詰めます。

「違うんだよ国木田君。」
「何が違うんだ太宰。今度はいったい何を企んでいたんだ。」
「これは乱歩さんの案なんだったら。」

乱歩の案ということをきいた国木田は、太宰の胸ぐらを掴む手を緩めました。

「彼は仮入社という立場だろう?入社試験にあの写真機を使おうと、乱歩さんが。」
「それにしてもこれは……。」

国木田は黙りこくって顔をしかめました。何を善いと云っていいのかわからなかったからです。

「僕、Aさんの様子を見てきます。」
「待ちたまえ。何処にいるのかもわからないのに……。」
「わかります。」

それだけを云って、宮沢は足早に探偵社を出ていきました。

社内に残された二人は沈黙しています。

太宰は昔の自分を思い、今の自分を歯がゆく思いました。

人を救うというのは本当に難しいことです。

自分が生きていることによって救われないように、救いを望んでいない者もいるのです。

人を救って、生きて、生きて、生きていれば、自分が救われるとでも云うのでしょうか。

わからなくなるのです。

ただ憂鬱なのです。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 男主 , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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えころじぃ(プロフ) - すごい好きです!更新楽しみにしてます! (2018年11月28日 21時) (レス) id: f048ef9aab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:宮沢はしじ | 作成日時:2018年8月21日 19時

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