戴きます。〈文豪ストレイドッグス〉 (ページ12)

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入社ページ12

「太宰はまだ帰ってきてないな。」
「国木田さんもいませんね。」

仕事が片づいた賢治とAは帰ってきましたが、ぽつんとした社内の様子に首をかしげました。

「太宰は虎探し。国木田は太宰を探しに行った。」
「乱歩さん。」
「江戸川……。」

乱歩が出てきた途端、Aは今日一番の嫌そうな顔をしました。その様子に乱歩は膨れっ面になります。

「ていうか江戸川って呼び方なに。許可してないし。乱歩って呼んでって云ってんじゃん。」
「知らないな。君は江戸川だ。」
「生意気な奴だ。」
「君に言われたくはない。」

いつも通りです。乱歩とAは顔を合わせると、途端に云い合いを始めるのです。宮沢はその様子をにこにこと見ています。

「君は写真機の件があったにも関わらず、入社試験で私の写真機を餌にしただろう。」
「賢治を選んだのはAだろ。」
「あんな意地の悪いことをする奴は嫌いだね。」
「仕方がないだろ馬鹿。それがAの入社試験だったんだから。」

Aは武装探偵社に入社しました。

入社試験がすんでいなかったので、仮入社のような形でしたが、一月前ほどの出来事です。Aは入社試験に合格しました。

その試験は、依頼中に行われたのです。

「あの時のAさん、格好よかったです。」
「ありがとう賢治。」
「僕もあの時の君をほめてやってもいいよ。」
「君にほめられても嬉しくない。」

乱歩は机の上にうなだれました。どうすればこのわだかまりを和解に持っていけるのだろうと考えているのです。

何度も何度も考えましたが、答えが見つかることはありませんでした。それは自分のせいでもあるのですが、乱歩はそれを認めたくはありませんでした。

すべてを受け入れてほしいと思っているからです。

「国木田も太宰もいないし、今日は定時で……。」
「今日は帰れない。」

Aの言葉に乱歩が被せるように云いました。

「また可笑しな仕事を私に押しつけるのか?」
「もうそんなことしないって云ってるだろ。」
「そう云って、この間なんか……。」

バタン。

ドアが開き、やって来たのは国木田でした。乱歩とAの様子を見て、またやっているのかという顔をしました。

「国木田。太宰は見つかったのか?」

Aの言葉に、国木田は手元の紙をこちらに向けました。

「十五番街の西倉庫に、虎が……。」
「これでは定時には帰れませんね。」

ほら見ろと云う乱歩を尻目に、Aはため息を吐くのでした。