三輪隊の6人目__SideStory2 (ページ10)

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曇のち雨ページ10

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仁｢だぁぁあ！！わかんねぇ！！｣

雄｢仁礼さん……｣

どうして毎回こうなる

陽介に。仁礼に。

なぜ俺の周囲はテスト前に必ず胃を潰しに来る？

仁｢っておい！三輪どこ行くんだよ！！｣

「帰る」

仁｢駄目に決まってんだろ薄情者！！｣

薄情者。
そんな単語を知っているなら目の前の数式を解いて欲しいものだ

「……俺は何回も説明したはずだ」

仁｢わかんねぇもんはわかんねぇんだよ！｣

それに別に俺が特別頭がいいわけでも無い

奈良坂やAは確実に俺より上だし古寺も1つ下の学年でかなり秀でている

けれどそこには学校という閉鎖的空間の勝手に引かれた境界線が存在して、どうしたって俺は学力がどうにもならない奴らの相手をしなければならない

雄｢……もう1回ゆっくりやろ？｣

「……ﾁｯ」

仁礼だけなら確実にここで見捨てていた。

けれど何も悪くない三浦に全て放り投げて退散するのも申し訳ない

渋々席に戻り、全く進んでいない数学の参考書に舌打ちする

「……7！ぐらい計算しろ」

仁｢どうやんだよ｣

｢1〜7まで全部かけろ｣

これがAであれば10の階乗までは何故か覚えていて全く障壁にならないのに

仁｢28？｣

「足すな。かけろ。」

＿＿＿＿＿あぁ

Aは今頃何をしてるんだろう？

頭のいいやつに囲まれて実のある時間を過ごしているのか

綾辻？氷見？宇佐美？三上？

誰であっても仁礼より充実した時間になるだろう

雄｢……え、ちょっと、！｣

「……隊室に戻る」

仁｢待てよ！！｣

あいつが居なくとも少なからず現状よりはマシだろうと再び食堂の席を立つ

慌てて2人に止められるがなんだっていい

ただ今は自分の心が休まる場所に行きた＿＿＿＿＿

『むりぃぃぃ、』

……A？

仁礼の泣き言に似た発言は聞き間違えるはずのないあいつの声で

近くに居たことに驚かされる

声の方を見ると見慣れた黒髪が誰かの方に傾いていく

『……無理』

｢はは、大丈夫。頑張ろうな｣

小柄なあいつより頭1つ分デカい隣のやつはもたれ掛かるAの頭を撫でて幸せそうに微笑む

たったそれだけを見た瞬間

俺の中で黒い塒が巻いた