(後日2) ページ6
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……どうして彼女が俺の怪我を知っているんだ?
みすぼらしい姿なんて見せまいと隠しとうそうとしたのに
『綾から聞きました。誤ってコップを割ってしまったと』
柿 「あ、誤って……?」
柿崎の言いたいことは分かる。“誤って”で割れる物じゃない。
けど、それは彼女も分かっているはずだ。
分かっていて、何も問わずに心配してくれている
純粋で美しい。
そんな彼女の手が自分の手を撫でた
『……広報の件ごめんなさい。嵐山さんの負担を増やしてしまって』
「あ、いや」
別に仕事が増える事は何も問題ない。至って今まで通りにこなせばいいだけ。
俺が問題視しているのは、今俺の手を優しく撫でてくれる君の温もりが離れていくこと
『……私要領良くなくて。勉強と隊の仕事と広報、風間さんのスパルタの全部をこなすのは無理でした』
苦笑いの様な自嘲の様な笑顔を零す彼女は俺の手よりよっぽど痛々しい。
きっと俺の知らない所でもっと深く大きな何かを抱えていたんだろう
『けど。そんな私を支えてくれる人と出会えたので。今は彼に献身する事に専念します』
____“彼”が誰かなんて言わ無くても分かってしまう
『嵐山さん。
秀次と出会わせてくれてありがとうございました』
あの日俺の心に後悔を募らせた言葉と同じ事を言ってのける君
効果音が付く勢いで笑ってみせる彼女にはさっきのような痛々しさは残っていない
柿崎も弓場も生駒もその輝かしい笑顔に息を飲んだ
_____その時
秀 「A、行くぞ」
俺の心に再び影が落ちた
「……三輪」
だが、
あの日とは違い、向こうも気まずそう素振りを見せる
当たり前か。
俺だけじゃない。迅もいる。
そんな状況下に執着する相手がいるなんて気が気じゃないはずだ
『では私はここで失礼します』
迅 「……秀次の事頼んだよ」
『はい』
頭を撫でる迅に微笑んだ後、彼女は三輪と肩を並べて去っていく
月 「やっぱり素敵」
柿 「おわ!?つ、月見いつから…?」
月 「あの2人……ふふっ。これからが楽しみ」
柿崎の質問さえ無視して嵐の様に現れ嵐の様に去っていく
彼女たちのオペレーター
柿 「……またやべぇチームが出来上がったな」
生 「せやなぁ。イコさんようやっと隠岐がご執心な理由がわかった」
弓 「生駒話きけやァ…」
置いていかれ、放心状態になる俺たちは気づかない
あと1つの傷心に
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時