わん。 ページ46
・
『……あの、なんですかコレ』
「ん〜？なんだろうね」
『は？』
失礼だろうか？いや確実に失礼だな。
今私先輩に向かって“は？”って言っちゃった。
「Aちゃんって爪の形綺麗だよね」
『そう……なんですか？』
「うん。姉ちゃん達見たら羨ましがるよ」
『はぁ、』
そう言うものなんだろうか。
私には分からない。
何せ爪＿＿＿＿言ってしまえばネイルにあまり興味を抱いた事がないから
二宮隊の隊室に連れ込まれ、犬飼先輩に爪に液体を塗られている今現在の状況をイマイチ理解できないのだ
「よく姉ちゃんにネイルしろって頼まれてさ、」
『……私は実験台って事であってます？』
「いや、寧ろ本番？」
本番。本番？
お姉様方に頼まれて習得した技術披露の場が私ってどう言うこと？
……あ、アレか？
なんか自己満みたいな()
「……あながち間違ってないけどね」
『ひょえ？』
「……突然で悪いけどさ、Aちゃんって恋人を染めたい派？染められたい派？」
……。
いや、突然だな。
恋人を染める？
恋人に染まる？
どちらもピンと来ない表現だけどどっちなんだろ。
＿＿＿＿＿、あ。
『……強いて言えば“染まりたい”ですかね』
別に相手をどうこうしたい欲は無いし、
どちらかと言えば相手の世界に引っ張ってもらいたい。
……ほら、
秀次とか。そんな感じしない？
「ははっ。俺は“染めたい派”。俺たち相性いいね」
『？？そうですか……？』
確率的に50%ならそんな事ない気がしますけど、なんて事は言わない。
だって今一瞬目からハイライト消えたからね？こわ
『……と言うか、匂い大丈夫です？二宮さんとか厳しそうですけど』
「大丈夫。あの人暫くは帰ってこないから。その間には終わるし換気まで済ませちゃうよ」
『計画的ですね』
ついでに“大人〜”と付け加えると
先輩は妖しくそっと口角を上げた。
・
雑談をしながら彩りを帯びていく自分の爪を眺めて小一時間。
“完成”と言われた自分の爪を見て驚嘆した
『……綺麗、』
ターコイズブルーとマスタードイエローを基調とした海辺デザイン
どちらのカラーもくすみ系せいか纏う雰囲気が大人っぽい。さすがお姉様指導
「めっちゃ似合うよ」
『大人の女の仲間入りです』
そうして少し浮かれていた私はまだ知らない。
この後、ネイルを見て犬飼先輩嫌いの姉が絶叫して気絶する事を
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作者名：八月蝶 | 作成日時：2023年3月16日 16時
