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そんな事があって以来極力彼女との距離を詰める事に尽力した。
例えば
声をかける頻度を上げたり
名前で呼んだり
とにかくAにとって特別な存在になりたかった。
____なのに
彼女との距離はどんどん開いていく。
最初に感じたのは少しの違和感
だんだんと目が合わなくなったり
何となく避けられているような気がしたり
それでも初めのうちは気のせいだと信じて止まなかった。
……いや、そうであってほしいと願っていた。
けれど嫌な予感ほど的中してしまうらしい。
__________
『片桐〜!!』
片 「うお、…そんな勢い良く来なくたって俺は逃げないよ」
『だって片桐いたからつい』
片 「……あんまり可愛いこと言われると困る、」
__________
秀 「A。体調は?」
『心配しすぎだって。大丈夫だから。
……あと人のこと言えないでしょ』
秀 「……別に」
『ふふ、一緒に帰ろっか』
__________
そんなやり取りを何度見たことか
俺が避けられている間にも2人との距離は近づいていく。
_____特に三輪。
未だに鮮明に覚えている。
合同訓練帰りに隊室に行った際にソファで作業する三輪の膝で彼女が眠っているのを見た衝撃を
俺の入室を確認した三輪は特に何を言うでもなく、再びタブレットへ視線を落として彼女の頭を撫で付け始めたのだ
……けれどもっと最悪な事にそれは1日だけではなかった
多い時には1週間に1度。
酷い時は膝枕に加えて彼女が三輪の手を握ったまま寝ていたりした。
「(……なんの拷問だ)」
俺と相反して三輪や片桐との距離はおかしいぐらいに近くなって
気づいた時には
三輪は普通にハグするし
片桐は頭を撫でるし
……2人とも蕩けたような顔で甘い声を出す
___いや、三輪に至っては前からそうだったのかもしれない。
俺が親心だとか親友に対する気遣いか何かだと決めつけていたものは最初から恋心だったんだろう
……まぁ。
それにしても理由が分からない。
彼女を傷つけるような事をしたつもりはないし、したくもない。
____ならなぜ
「……奈良坂くんのファンが怖いからって。その……奈良坂くん女の子に人気だから、」
深まる疑念を払拭出来ず四苦八苦していた時
彼女の友人である三上歌歩はそう言った。
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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月16日 16時