女王の朔望月 (ページ7)

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転校とはこんな厄介な物だったんだろうか。

そう疑問に思ったのは意識が回復し、彼＿＿氷鷹北斗くんの独白を聞いた時だった

私が転校した先は夢ノ咲学院
“アイドルの、アイドルによる、アイドルのための学び舎”

つまりアイドルの楽園である。

つい先日まで普通の女子高校生だったはずなのに、気づいた時には“プロデューサー1号”として期待の星の様に扱われていた

｢(…ん〜解せぬ)｣

普通すぎる私に一体何を求めているのか、
と疑問に思いつつも、このイレギュラーな学園に早く慣れる為に友人たち＿＿氷鷹くん、明星くん、遊木くんの3人と一緒に学校を回った

そこで案内されたのがドリフェス非公式戦であるB1の龍王戦だった

ひどく荒々しい試合に怯んだのも束の間

気づいたら怖そうな男の子がこちらへ飛んできて、
気づいたら意識を失った

と、言っても意識を無くしていた事に気づいたのは長い夢から呼び起こされる様に低く、落ち着いた声が聞こえてきた時

目を開けようともしたが、やけに神妙なその声は
まるで“そのまま聞いてろ”とでも言うようだったので

申し訳ないけど嘘寝をさせてもらった。

そんな状況下で耳を揺らした氷鷹くんの独白は酷く痛々しいもの

｢アイドルの、アイドルによる、アイドルのための学び舎｣

と言うのは建前で、本当は

｢よいアイドルの、よいアイドルによる、よいアイドルのための学び舎｣であり、劣等生は永遠に日の目を見ないと。

｢(……そんな悲しいことあるんだ)｣

大きな期待と野心を抱き入学しても、学院が規定する“理想のアイドル”に均される

そして学院のシステムさえも、社会的に求められるより良い“理想のアイドル”を生み出すために勝利がお膳立てされているらしい

それによって現在の状態では圧倒的権力を持つ生徒会の個人か、そのユニットしか勝利出来ない、と

俗に言う絶対王政の様なシステムに心が沈んでいくのが分かる

＿＿＿けれど

彼は。彼らはこの学院を変えたいと強く願っている。
方法は分からなくとも、戦う意思がある。

｢(なら私は＿＿＿)｣

“転校生”とか“プロデューサー”とか人目を引く肩書きを持ってるんだ。

何も使わずに学院で朽ち果てて行くにはあまりにも惜しい｡

｢(……やってやろう)｣

1人そう決意すると

巻き込んで、傷つけてすまない。
そう謝り、彼は保健室から去って行く

それを確認した後、

私はゆっくりと目を開いた