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「ふふ〜ん♪」

『あの凛月、』

「なぁ〜に?」

『手…』




隣の彼はなぜかご満悦顔で鼻歌を歌いながら歩いている。

しかも手を繋いだまま。




「別にいいじゃん〜」

『いや、その…』

「んふ〜恥ずかしがってるのも可愛いね。…あ、図星?」

『っ〜』




ここで直ぐに“違う”と否定出来ないのが非常に悔しい

凛月はからかうようにニマニマと覗き込むがこちらはそれどろこじゃないのだ。



今まで何も言わなかったが以前と比べて明らかにスキンシップが増えている

抱きつかれた時は衝動的に身体が動いてしまったのだろうと思っていたけど現状を見るからに明らかに違う。



もっと別に意図があるような気がしてならない





「俺がただ繋いでたいだけなんだけど」

『え?』

「なんでって顔してたから答え言っちった♪」




……なんだろう。

昨日・今日を通して凛月が私の一手先を読んでくる気がする





夢ノ咲から逃走を謀った時に裏門ありつけたり

私の本心を見破ったり

帰りに待ち伏せていたり





まるで騎士団の参謀みたい。




そんなことが頭をよぎった時、隣の彼が私と向き合うようにして足を止めた。


それに合わせるように辺りを見回すと既に家の周辺まで来ていたことに気づく




『(……そう言えば以前凛月と帰る時はここまで送ってもらっていたわね)』



簡素な公園


そう表現するのが相応しい気がする。

敷地は広いわりに設置されている遊具は2台のブランコと滑り台だけ。あとはベンチが3つほど。




何となく凛月にあの無駄に豪勢で権威を詰め込んだ家を知られたくなくて家から徒歩5分ぐらいのこの公園で分かれるようにしてたっけ。



考えることにいっぱいいっぱいになっていたせいで気づかなかった。




「……俺さ、この前言われたんだ」



今にも消え入りそうな声に反応して視線を移すと彼の真っ赤な瞳は私だけを捉えていた



「“時計の長針と短針が重なるのは1時間でほんの一瞬。誰も気を留めないうちに重なって、また少しずつズレていく”って」

『……そう』

「だからこの一瞬を逃したくない」



っ、



……あぁ本当に。



ずるい人





「ほんとはここから先に進みたい。……けどそれだとまたズレちゃう気がするから」

『うん』



なぜか太陽に溶けそうな紅が心に入り込んだ気がして




「またね」

『……またね凛月』




僅かに力が込められた感覚に明日を誓い、微笑んでからその温もりを手放した

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作者名:八月蝶 | 作成日時:2023年3月3日 23時

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