女王の朔望月 (ページ32)

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いつも通りアニキと一緒に家を出て朝練のために夢ノ咲へ向かった。

……いや5分ぐらい早く家出た気がする

いざ部室に来てみれば中から女の子の声が聞こえて“転校生さん熱心だなぁ”程度の感覚でアニキと一緒に勢いよく扉を開けた

｢｢おっはようございまーす！！………………え？？？？｣｣

けれどそこに居たのは想像していた人物では無かった。

黒髪で白い肌にコバルトブルーの瞳を持ち、ﾄﾞｶﾝ、ｶﾞﾝ、ﾊﾞﾝとヤバい音を出す棺桶に座るその人は朔間先輩を見慣れた俺たちでさえ息を飲むほど美しい

それにしてもこの状態は一体なんだ

彼女は間違いなく夢ノ咲の制服を纏い、青いネクタイを締めているが確実に見覚えがない。何よりこの学院の女子生徒は最近転校生してきたプロデューサーが初めてだと思ってた。

理解出来ない現実を前に首がアニキと彼女の方へ交互に動く

『……驚かせちゃったね』

そんな俺たちを見かねてかゆっくりと口を開いてくれた彼女の声は透き通る様に美しく、想像の何億倍も魅力的

最早本能がこの人はヤバいと伝えてくるレベル

『突然ごめんなさい。力を貸して欲しいの』

力？
え、手助け？

こんな世界操ってそうな人が初対面の俺たちに何を求めるのだろうと率直な疑問が爆速チャリの様に頭を過ぎる

異質なオーラに引き返すなら今の内だ、と脳内で警笛が鳴るが、彼女は次の一言で俺たちを簡単に取り込んでしまった

『……貴方たちイタズラは好きかしら？』

＿＿＿＿＿イタズラ。

｢｢だーいすき！！｣｣

たった一言。されども一言。
俺たちの食いつきに嫌な予感を感じ取ったのか棺桶からバコン！と破壊的な音が聞こえる

そんな朔間先輩にバレない様に有頂天になった俺たちを手招きする彼女の元に飛びつく様に近づくと

何やらスマホに指示が書かれている

……ほほう

｢(これを、やれば、いいの？)｣

ジェスチャーと口パクで彼女に問うと綺麗すぎる所作で頷いてくれる。

｢｢((了解！！))｣｣

その動作を確認してアニキと協力して指示に従う

恐らく今からする事を朔間先輩に察知されたくないだろう彼女の心境を察知して大道芸で培った身体能力、後は楽器を使って音の錯乱を試みる

｢(……まぁ朔間先輩なら棺桶の中でも何してるか分かっちゃいそうだなぁ)｣

俺たちもよく驚かされる程何でも出来ちゃう人だから

けど、それより驚かされたのは

＿＿＿＿＿彼女の指示が1mm単位だった事