女王の朔望月 (ページ30)

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“俺たち2人の幸せだった”
そう言った彼は目に涙をいっぱい貯めて無理やり笑ってくれる

『……ありがとう。貴方がそう言ってくれただけで十分よ』

＿＿＿＿例えそれが嘘だったとしても

この大きな満月が見えなくなるまでは虚像の幸せの中にいさせて欲しい。

｢ねぇA。久しぶりに会えたんだから沢山お話しようよ｣

『……そうね。凛月、貴方の話を聞かせて？』

……意地悪かしら。

本当は姿を消した私の事を知りたがってると分かっていてそうさせないなんて

でもこれでいい。これがいい。

貴方はこれ以上私に想いを募らせてはいけない

貴方はただ、

私を恨んでいればそれでいい

｢ここにしよ。満月がよく見える｣

私の手を取り、導く様に床に座られてくれる彼はさながら本物の騎士のように凛々しく美しい

……見ない内に成長したのね。

｢何から話そうかなぁ♪……あ、そう言えばまーくんがね、｣

手を軽く握り、体重を少しこちらに乗せたまま綺麗な声で話し出した彼はどこか嬉しそうで本当に真緒くんが大好きなのが伝わってくる

何度か相槌をうち、話を促すと更に声を弾ませる

楽しそうに真緒くんを語る彼の目にもう涙は浮かんでいない。

「それでセッちゃんが〜」

“セッちゃん”、“ナッちゃん”とKnightsメンバーの話を次々にしていく辺り彼には大切な居場所ができたんだろう

その事実に何処か寂しさを覚える心に首を振り、“良かった”と言う安心感を自分に植え付ける

……そう。良かったのよ。

「……それで、…ん〜、まーくん、がね………………」

あれから何時間経ったのか分からない

けれど顔を上げればくっきりと浮かんでいた月は消え、優しい光が差し込み、段々と声が小さくなった隣を見れば今はもうすやすやと寝息を立てている

『……本当に私は最低ね』

彼の＿＿＿＿朔間の性質を利用するなんて

『ねぇ凛月。貴方と過ごした時間は嘘偽り無く本当に幸せだった。ずっと隣に居てくれたのにあんな酷なお別れをしてしまってごめんなさい』

何も告げずメッセージだけ残すなんて、ね

『でもきっと貴方は大丈夫よ。貴方を支えてくれる人が沢山いる。……それに亡霊(私)の存在も確認できたでしょ？』

だから今度こそ曖昧にせず終わらせましょう

『ありがとう凛月。そして

＿＿＿＿＿さようなら』

大好きな貴方の幸せを願ってる