Secret. Part6 (ページ5)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:75,036 hit

file.193 ページ5

今の学校の敷地に入ったのは、

その時が初めてで。

転校する時に考えていたことはもう、

｢早く出ていきたい｣ってことだけで。

前の学校から出られるのなら、

正直、何処でも良かった。

────

前の学校の制服……まぁ、所々黒ずんでるんだけど、それを着て。

制服や教科書を買う為に、新しい学校へとやって来た。

校門で、担任となるあの先生が待っていてくれて。

目隠しの長い前髪や、

日常を普通に過ごせてはいなかったことがすぐ分かる制服を着ていたら、

普通だったら、異様なものを見る目で見ると思う。

でも先生は、緩い感じで、

｢よぉ、今日はわざわざありがとなー｣

如何にも普通の人間に声をかけるかのように話し、｢じゃあこっち｣と、俺を先導した。

………でも、最初はそういう対応をして、手のひらを返した人間を沢山見てきた俺にとっては、逆に不快だった。

そういう人間は、今まで沢山居た。

暴力の傷を見て気にしないフリをしたり、｢可哀想｣とか言った人間は、

大抵次の日には、傷をつける側になった。

｢(この人だって、新しいクラスの人も、きっと)｣

そう考えながら、新しい学校へ足を踏み入れる。