勿忘草の丘 ２.【オリジナル長編物語】

71話 故郷を離れて ページ26

私達は、小さな螺旋状の階段を登っていく人達を追いかける。

ツリーハウスは、大木の枝の中に隠れるようにつくられていた。

上に登るための階段を、秘密基地らしい梯子にしなかったのには、何か訳があったんだろう。

高所恐怖症で下りるのが怖いとか、百合亜さんみたいに体力がないとか、なんとか。

今回ばかりは一矢も骨折してるし、これは実にありがたい。



「懐かしいわ〜、よくここで作戦会議してたっけ。ね、世羅？」

「あ？ 今もそうだろ。これからは見習いも仲間に入るから、もっと賑やかになると思うぜ」

「見習いって、俺達も入れるのか？」

「えぇ、いいんじゃないかしら。私が先輩なんだから、これからみっちり鍛えてあげるわよ！」

「イヤッホォォォイ！！」

「一矢うるさい」



秘密基地の一員になれることに、甲高い喜びの声を上げた一矢。

その高い声は秘密基地の小さな窓を超え、街の周りの約半分を覆う森を超え、きっと北東に見え

るあの雪山まで飛んでいき、イヤッホーイという声が街中にこだましていることだろう。

紗羅達はしばらく基地の本をつかって情報集めをした後、私達と共に家に帰った。

玄関の扉を開けたのは、丁度百合亜さんが手続きを終わらせた頃。

これで、澪は私達の世界には存在しなくなったのだ。澪は、魔法の世界の住人になったのだ。

もう、"午後１時、荒沢小学校に集合。自転車必須。" の約束をする事はないだろう。

現在の時刻は２時半。百合亜さんの仕事の速さには驚かされる。

「その速さを運動で活用したいぜ」と雷華さんが余計な事をいうもんだから、ありえない方向か

ら哲学書や歴史書や魔導書やらが吹っ飛んできていた。

その本は全て雷華さんに向けて放たれていたが、彼女の方は慣れた様子でそれを避ける。

そして、飛ばされた本は綺麗に元の場所へ戻っていった。

呆れながらため息をつく百合亜さんが、その顔のままで澪に話しかける。



「貴方の住居は私の家の空き部屋になるけれど、それでもいい？」

「はい、勿論です！」



百合亜さんによると、人間にとって基本的な知識(中学で学ぶ事)も教えながら、魔法使いにしか

できない街の依頼をこなしていくらしい。

ちなみに、魔法使いの仕事を生業にして生きていくと言い出したのは澪の方である。

いつかは私も、この街で生きていくことになるんだろうか。

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ラッキーカラー

あずきいろ

キャラの最近つぶやき【２.】編

雷華 「最近暇すぎて百合亜の人形で寅と遊びだす夕食後の自由時間。」

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