勿忘草の丘 ２.【オリジナル長編物語】

57話 水峰寺の椿 ページ12

水峰寺の敷地の中には誰もいなかった。

髪の短い二人の少女が、自転車を引きずっている。

駐輪場所に停める時にできた穴の跡は、一体誰が綺麗にしているのだろう。余所見をしながら重

い自転車を停めた二人は、そんな事なんて気にも留めずに奥に入っていく。

鞄の中、小人の手先は冷たかった。



「あれ、誰も来てないなぁ。今日は土曜日だから何人か人がいるはずなのに」

「そうだね、何かあったのかも」



いつもの寺に、妙な変化があった。

毎週土曜日にお寺のまつぼっくりを拾いに来る子供達がいない。散歩の途中、奥の池で休憩をし

ている仲の良い老夫婦もいない。落ち葉の掃除をする近所のおじさんすら見当たらない。

違和感を感じる程静かだった。いつもは汐浜区周辺の憩いの場なのに、人どころか動物や昆虫の

気配すら全く感じられなかった。

ただ単に静かだった。



「今日は随分静かだなぁ。A、一回奥に行ってみようよ」

「……駄目、そっちは危険だから行かないで」



澪が私を誘いだすと、私の頭の中で突然危険信号が発令された。背筋を指でなぞられるのとは少

し違う寒気と、突然体の中身がごっそり抜かれた様な喪失感が私を襲う。

誰かが、そっちには行くなと警告してきたんだ。

私は今、緊張している。教室で、ひやひやと忘れ物がないか確認している時と同じ感覚だ。

だから私は澪に声をかけたんだけど、やっぱり慣れた場所だから緊張がほぐれてしまう。



「え、水峰寺はいつも遊んでるとこだから安全だと思うんだけど………」

「うーん、じゃあ一回確かめに行こう」



結局、止める事なんてできなかった。

寺の池の側、枯れかけた椿の花がポトリと落ちる。

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キャラの最近つぶやき【２.】編

雷華 「最近暇すぎて百合亜の人形で寅と遊びだす夕食後の自由時間。」

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