勿忘草の丘【オリジナル長編物語】

33話 相合傘じゃありません ページ35

最近女子がやっている恋バナ。

確かに面白そうだけど、私自身はまだ恋をしていない。

あるいはまだ自覚していない。自分の事がきちんと理解できていない。

それは澪も同じ。彼女も好きな男子はいないらしい。もう随分長いこと、聞いてないけど。

最近は叔母さんもそういうのが気になるみたいで、本来結婚しなければいけない年齢なのはそっ

ちなのに、たまに聞いてきたりする。たまになので鬱陶しくは思わないが、少し返答に困った。

まぁ、今更叔母さんが結婚しても普通に困るけど。



この歳で好きな子がいないって、どうだろう。

確かにそういう子もいるっちゃいるし、私だったらみんなにとってはイメージ通りかな。

真面目でお堅い女子に好きな子がいるなんて、おかしい気もするよな。

だから"あの時"も、大事にならずに済んだ。

それが良いのか悪いのか、私には分からない。



「A、この傘ちょっと小さいから、もっとこっち寄らないと肩が……」

「そんな事したら狭くなって一矢が濡れる。私は雨が好きだから」

「ふーん。たまに変わってるよな、Aって。つーか傘持たせてごめん」

「いい。私が頼んだ事だし、一矢が持つと身長差で危ない」

「おい」



そう、私達は世にいう相合傘というものをやっている。

小学校の時には、唐突な雨で友達の折りたたみ傘の中に入れてもらうなんて、当たり前。

傘は身長差から考えて、一矢が持つと辛いだろうから私が持ってる。私は一矢の方に傘を傾けて

いるから肩が少し濡れていた。

今言った通り、私は雨が好きだ。夏だと涼しいし、傘をささずに濡れていると自分の中に溜まっ

た汚れを少しだけ洗い流してくれる気がする。台風はもっと好きかな。一石二鳥だし。

いや、やっぱり雪が一番好きだ。

いやいや、やっぱり涼しい風の吹く雲がかかった青空の方が好きだ。

だからかもしれないが、私は秋が一番過ごしやすい。

それにしても、さっきから一矢がこっちを向いてくれないし、話しかけてすらこない。

ようやく口を開いたかと思ったら、出てきたのはこんな言葉だった。



「なんか、ちょっと恥ずかしいな……」

「そう？」



その時、一矢の頬がほんのりと紅く染まっていたのに、私は気づいていない。

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ラッキーカラー

あずきいろ

作者が今後使う名言(？)を作るコーナー（フラグではないはず）

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