勿忘草の丘【オリジナル長編物語】

1話 憂鬱な朝 ページ3

「………っは！」



驚いて目が覚めた。

深呼吸をして、未だに激しく動く心臓を押さえる。

今日は確か、入学式の次の日。多分金曜日。

正確に時を刻む目覚まし時計の音が、私の心をしだいに落ち着かせていく。

私、繋木Aは細く小さな肩を縮ませて、白い頬をつたう冷や汗を拭った。



「はぁ……」



疲れてるのかな……

金曜日は私にとって、やる気が出ない日だ。あともう少しというのは分かっているのだが。

しかも、中学に入ってからのクラス替えで同じ小学校の友達と別れてしまった。

一番の親友の澪とも離ればなれになって、もう最悪。



これからどうするっていうの。



重いため息を吐きながら、後ろに置いてある黄色っぽい目覚まし時計に目をやる。

現在の時刻は午前６時半。小学校の時よりも、起きるのが１０分くらい早い。

学校の登校時刻はまだ先なのでもう少しゆっくりでも大丈夫だろう。



眠い目を擦りながら、少し急な階段を下りる。こたつが置かれた居間には誰もいない。

別にいいの。小さい頃からそうだったから、もう慣れた。

幼い頃に父さんは亡くなり、母さんは仕事の都合で海外に行ってしまった。たまに会いにきてく

れる事もあったけど、５歳くらいになってからはずっと会ってない。

だから、今は親戚の叔母さんと一緒に暮らしているの。

私の両親、特に亡くなった父さんの事のほとんどは、叔母さんが教えてくれた。

叔母さんは仕事が忙しいから朝が早いけど、私にとっては寂しくも何ともない。

テレビの黒い画面に私の顔が反射し、短めの髪が爆発しているのに気づく。

昨日ちゃんと乾かさなかったからな。後で適当に直しておけばいいか。



ごはんを食べ終えて着替えをした後、洗面所で歯を磨きながら考えた。

同じクラスの一矢って奴。同じ小学校で、１年生の頃からほぼ同じクラスだったよね。

あいつだけでも一緒のクラスになれてよかった、あいつとはずっとライバル仲だったし。でも、

最近の一矢はいつもよりしつこいというか、用事がある時、声をかける前に肩を叩かれるのが多

いというか、小学校の時よりもよく話すようになった。

あんまり回数が多いので、私の方も気になってしまう。

あぁ、澪に相談してみようかな。恋バナだって茶化されるかな。



「うーん……」



こんな事考えていたってしょうがない。さっさと準備して学校に行こう。

ちょっとだけ横にはねた黒い髪の毛は、短いから真面目にとかなくても大丈夫だろう。

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ラッキーカラー

あずきいろ

作者が今後使う名言(？)を作るコーナー（フラグではないはず）

私の一番大切な人は、貴方じゃない。

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