勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

95話 お医者様を探して ページ5

あれから五日経ち、今日は土曜日。

医者のクラーレさんを探しに行く日だ。

世羅の意識は戻り、怪我もだいぶ良くなってきているが、まだ腹と頭の傷は良くならない。

それと、何故か治った所は傷跡が残っていないのだ。これがチートの回復力か。

紗羅は世羅の事をチートではないと否定するが、明らかにチートに近い能力だ。



「さっさとクラーレさんの所に行って治療してもらおうぜ。あの人ならこいつみたいな体質の奴

でも簡単に治してくれるからな」

「世羅の怪我が治ったらすぐに魔物の大将を見つけ出して退治しなきゃ！」

「あ、そうだ。一矢は骨折してるけど大丈夫なの？」

「そんな事もあろうかと、一時的に骨折を治せる魔法をかけようと思っていたわ！」

「うわ、魔女の特権ってやつかよ」



紗羅が引き気味の一矢の右腕に魔法をかける。すると、本当に一時的に骨折が治った。これなら

一矢も安全に箒に乗れるし、足手まといになる心配もない。



「ほらA、二週間足らずで骨折が治ったぜ」

「一時的にね」



紗羅はケミストリーの街に続くゲートを開く。布団をたたんだ雷華さんは、自分の魔法で仔猫に

化けた世羅と寅をアレンに任せた。あ、確かにこの間見た黒猫だ。

紗羅のゲートの景色は夏の太陽の光が降り注ぐ珊瑚礁の海の中。見ているだけでも心が浄化され

たような気分になる。

３秒後にはいつものように視界が明るくなり、眩しくなって目を閉じる。

光が収まったと思い目を開くと、そこには百合亜さん達の街よりも随分と発展している街の景色

が広がった。イギリスの中心部の様な都会の街に、私達は驚かされた。だって、この世界の印象

といえば昔の西洋しかなかったんだもの。それとも、あの街が田舎だっただけ？

ふと紗羅の方をみると、見事に読心術を使っている。何しやがる。



「うん。私達の街がちょっと田舎だっただけ。こんな都会も滅多にないんだけどね」

『ええええええ』

「でも、こんな都会に湖なんてあるのかよ？」

「勿論よ。街の外れの方に小さな湖があるの」



あぁ、こんな都会にも湖が残っていたのかと私は正直に安心した。じゃあアルセニックという湖

の周りには広葉樹の森が広がっているのか、それとも針葉樹の森か。

それを言うならタイガの森か。いや、それは冷帯だ。

心の中でそんなツッコミを入れながら、私達はアルセニックという湖へ向かうのだった。

そういえば、アルセニックって英語でヒ素だったよね？

96話 ズィーゲルの森の妖精→←94話 大怪我をした師匠様

ラッキーカラー

あずきいろ

勿忘草の丘 ＊作成話 ＆・つぶやき

・中二病って難しいけどかっこいいんです

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す