勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

129話 荒廃した街の冷たい吐息 ページ39

小道を抜けると、曇り空が広がる街が見えた。先程の快晴が嘘のようだ。

柱にとまる複数のカラスが、この街の不気味な雰囲気をより一層引き立たせる。

地割れしたアスファルトや足元に転がるコンクリート片が、百合亜さん達が住む街とは明らかに

違う事を証明し、荒廃している事を物語っている。

コンクリート製のビルが数十本崩れていて、瓦礫が地面に覆い被さっている。崩れたビルの本体

の窓ガラスは綺麗に無くなっていた。

あの瓦礫の中から全て探し出して復元するのは、多分一生かかってもできないだろう。

一応崩れていない建物はあるが、みんな砂埃をかぶっていて汚い。窓ガラスも、割れてはいない

けどヒビが入りまくっている。

しかもおぞましい量の電柱がバキバキ折れていて、切れた電線が水溜りに浸かってるし。

少なくとも、人がまともに住めるような状態ではないだろう。



「あははは、相変わらず酷いとこだよなー」

「世羅、これを悪く捉えずに考えてみようよ。こんな街だからこそ血が騒ぐのさ……」

「そうだよな。やっぱりそうくるよな。俺もそう思ったもん。うん」



こんな怖い所でも、見方を変えれば血が騒ぐ。知里花さんの言う通りかもしれない。

私だって、こういう風景のゲームで探索とかやってみたいものだ。

生の殺し合いは嫌だけど、ゲームでなら銃撃戦も楽しいと思う。

世羅あたりは、近接と遠距離を上手く使って来るんだろうな。

雷華さんだって、大体はダガーを使うだろうけど、銃の扱いもうまそうだし。

カッコいいな、男前だなって思えてしまう。これで男性だったら完璧なのに。

人のことに口出しできるほど、私は立派ではないが。

らちがあかないと思い、ひとりで考えるのをやめて話し相手を見つけようと周囲を探る。

すると、呆れ顔の紗羅が姉である百合亜さんと楽しそうにお喋りをしているのを見た。



「あの３人、今日こそは本当に死んでそうなんだけど。ゆり姉はどう思う？」

「えっと、ごめんなさい。私はその人達と面識が無いの」

「そうだっけ。その３人、"奴"の３回目の襲来の時にこっそり助けにきてくれたのよ。今日の目

的地で会えるはずだから楽しみにしてて」

「えぇ。楽しみにしているわ」

「ふふ〜ん」



私の目に映ったのは、ただの二人の会話ではない。暖かい姉妹の会話だ。

それは、まだ私が感じたことのないもの。

私はひとりっ子だから。

きょうだいがいる事、それがどんなに羨ましかったか。

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ラッキーカラー

あずきいろ

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