勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

92話 もう片方の魔女の行方 ページ2

【澪 視点】



焼き尽くされる東の住宅街の景色はとんでもなく熱そうなのに、百合亜さん達の北側の家の方は

空気がひんやりと冷たい。あの襲来から一日経って、今日は月曜日。

今はもう大丈夫。街の人々は全員フェアヴァルト家と百合亜さんの家に避難してるし、燃えてい

る範囲は百合亜さんと知里花さんが結界を張っていたから。

そして、昨日の夜、魔物を浄化しきった。

幸運なことに、住宅街が燃えた範囲は小さかった様子。

百合亜さんの家は、元々旅人などが泊まる綺麗な宿屋だった。結構昔に旅人がピタリと来なくな

った時、宿屋を改装して今の様に魔法使いが住み着いたから、今も多くの人が避難できるのだ。

まぁ、今はたった数人しか住んでいないから、図書室とか実験室みたいな感じに割り振られてる

けどね。

私は自分の部屋で、鎮火された外の様子を眺めている。

Aとの約束、守れなかったな。会いたかったんだけどな。

今日を含めてあと五日、それまでAとは会えない。

もしも、あの火の海を見て帰ってしまったなら、私が生きているか心配するだろうな。

ごめん、A。心配しなくてもいいよ。私は元気だから。

百合亜さんに勉強を教えてもらいながら、お仕事もしっかりこなしてるからね。

あっちよりも、ここの方がずっと楽しいよ。なんならAもこっちにおいでよ。



この街には小さな学舎がある。でも、私の様な出身地が違う世界だったりすると入れないんだ。

もしもそれが本当なら、アレンは異世界から来た子だね。

あるいは、未来や過去からやってきた子なのかもしれない。これはまだ予想に過ぎないけど。

彼は一矢によく似ている。でも、彼は一矢じゃない。



「本当に、誰なんだろうね」



私はそう呟きながら、この家の魔法使いの過去と秘密を調べていく。

家や街の人から聴いたり、地下にある倉庫を見せてもらったり、北東にある図書館で調べ物をし

たり、調べる方法は様々。勿論、百合亜さん達には調べる許可を得ている。

一応この街の歴史は覚えておく必要があったの。それで推理したりするのも楽しいし。



深く知りすぎると危ないってよく言われるけど……

私の好奇心は、いつだって止まることを知らないし。

少しでもAの役に立つことができれば、嬉しいな。

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