勿忘草の丘 ３.【オリジナル長編小説】

105話 日之影家が継ぐ魔導書 ページ15

世羅の治療が終わった後、私達は街の商店街に出かけた。

あんなに迷ったはずの森も、クラーレさんがいればすんなりと抜けられる。

アルセニック湖に続くサフィロの花がほとんどなくなっている事に関しては、城跡にいた魔物達

が関与しているらしい。

移動している間、クラーレさんはケミストリーの街と百合亜さん達が住む街の歴史を沢山教えて

くれた。日之影家と共に政治を行うフェアヴァルト家のこととか、百合亜さんの街に魔法使いが

多い理由は神話の中で語り継がれている、だとか。



あと、日之影とエルティエの違いとか。

まず、現在のエルティエの魔法使い＝日之影家の百合亜さん。

そして、そのエルティエは代々伝えられてきた魔導書のこと。

なので、百合亜さん＝現在エルティエの魔導書を継いだ魔法使い。

まとめると、百合亜さんはエルティエの魔導書を継ぐ日之影家の魔法使い(桜さん)と人間(満さん)

との間に産まれたハーフ。エルティエさんという人物は存在しない。物だから。

桜さんはあの木に秘密基地を作った張本人であり、今は既に故人。それは満さんも同じ。

夫婦なのに苗字は変えなかったんだって。

あと、妹の知里花さんは魔法よりも馬術や槍の扱いの方が優れているそうな。



……たくましい。



なんだか凄くごちゃごちゃしたが、少し靄がすっきりした気がする。

医学だけじゃなくて歴史も強いのかこのお医者様。まぁ、得意なのは記憶教科だけらしいけど。

うーん、その割には哲学書がお好きなのですね。



「哲学書の最新刊とメモ帳、あとは真っ赤な林檎を買いに行くわね」



買いたい物の中にはフェアヴァルト家への贈り物も含まれている。

恐らく、それは真っ赤な林檎だろう。フェアヴァルト家の人々は林檎が好きなのだろうか。

商店街には、何が売られているんだろう。

私はクラーレさん達に引き連れられて、買い物を楽しんだ。



「あ〜 楽しかった！」

「そうねぇ。お目当の品が買えて、Aちゃんがくじ引きで三等を当ててくれたし」

「いえ、偶然ですよ」



買い物の後、私達は百合亜さんの街へ向かおうとしていた。

皆は口々に買い物の感想をつぶやく。

私は箱の中から取り出す系のくじ引きで三等を当て、果物の詰め合わせをもらった。

元から、箱の中で選ぶ系のくじだけは強かった。ぐるぐる回す奴は全然駄目。

この果物は後で百合亜さんやクラーレさんに切ってもらうつもりだ。

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