勿忘草の丘５.【オリジナル長編小説】 (ページ45)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:4,507 hit

225話碧い丘の分かれ道ページ45

【世羅視点】

皆でワイワイと家に帰るまで、俺は峠の脇にある雑木林やら何やらの物陰を覗いて、アレンを探

していたんだが、道中では何処にも気配は感じられなかった。

だとしたら一体何処に行ってしまったんだ。突然行方をくらました弟子を案じ、さっきから続い

ている謎のとっかかりのこともあり、俺は家に帰るまでずっと頭を抱えていた。

結局Aの臣下さん達を家に招き入れたのだが、俺自身は一向に解決しない問題にすっかり困

り果て、リビングの床の上でぐるぐるとまわる事しかできなくなってしまう。その様子を見てい

たらしい紗羅が、すぐそばの黄色いソファーで一休みをしつつ俺の方に顔を向ける。

「アレンなら、いつものあの場所にいるんじゃない？」

「………ん、あいつなら行きそうな所だな」

得意げな顔をする紗羅の助言のままに賑やかなリビングを出て、随分前に取り替えられて綺麗に

なった玄関の扉を押し退け、俺はこの家のすぐ後ろにある小さな碧い丘を見上げる。

もう一度アレンの気配を追ってみると、丘の中でも雪山に近い所に僅かな反応があった。

俺とアレンが初めて出会った、A達が初めてこの世界に来た、何か大きな秘密を隠し持って

いそうなこの丘。いつも強い魔力が集まっている、不思議な丘だ。

さてと、アレンを呼びに行くか。

「………っ！？」

突然後頭部を鈍器で殴られた様な衝撃を受け、胸の奥が詰まるくらいの息苦しさに襲われる。

俺は小さな呻き声をあげながら、ゆっくりとその場に膝をついた。

俺の後頭部を殴った奴はいないし、魔法で俺の首を絞めている奴もいない。

たまにあるんだ、本当に悪い事が起きそうな時にだけ、こういうのが。

２度目の襲来で"奴"と戦った時も、似たような感覚が全身を廻った。

それで、本当に悪い事が起きてしまったんだ。もしかしたら防げたかもしれない、悪い事が。

勘がよく当たるのは普通に俺の強みだが、これは勘の域を超えていると思う。

どうしよう。暑い日差しが白髪を照りつけるはずなのに、指先は氷のように冷たい。

でも、今の俺は未来予知なんて能力ないし…… 解決策は見つかっていないんだ。

Aや一矢の事を気遣って、ひとりでアレンのもとへ向かうべきか。

あいつのことだからすぐに帰ってくるかもしれないし、さっさと家に引き返すべきか。

まだAを借りられるから、一矢に取られてへこんでいるあいつを一緒に慰めに行くべきか。

＿＿＿＿＿俺は、