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貴女に惚れた10 ページ13

「探偵、江戸川乱歩だな」


俺がそう云えば江戸川は、“名”探偵だ!と不服そうに反論した。眼鏡越しの瞳が鋭く俺を観察している。


「それで?“名”探偵が俺に何の用だ?」


「君…本当はこんな所に居るべき人じゃないでしょ」


江戸川の言葉に周りの人間が騒つく。


「乱歩さん、どう云う事ですか」


俺達の一番近くに居た国木田がそう問いかけて来た。江戸川は答えない。俺を見据えたまま、俺の言葉を待っている。


「…俺は私用(・・)で此処に来ているだけだ。公私の分別くらいは見分けがつく」


暫く膠着状態が続いた。と、不意に江戸川が大きな声で笑い出した。余りにも突然過ぎて、視界の端で国木田がたじろいだのが見えた。


「あっはっはっはっ!そうかそうか、それなら良いんだ!」


いやぁ疑って悪かったね!と云いながら俺の背中をバシバシと叩く。状況を理解出来ていない社員が困惑しているのが伺えた。


…成る程、確かに噂通りの人物の様だ。


「それで、君与謝野さんに逢いに来たんだっけ?」


「そうだ。居ないと云う事は出掛けておられるのか?」


「購い物だってさ。まだ暫くは戻らないよ」


…すれ違いになった訳か。そのまま街に居れば良かったな。


「帰って来るまで下で待つ?」


「……そうさせて貰おう」


未だに状況が飲み込めていない周りの人間を放ったまま、俺達は与謝野女医を出迎えるべく、下の喫茶処へと向かうのであった。

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Asterisk@あーちゃん(プロフ) - 『鳳』って、与謝野晶子女史の旧姓ですよね!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
Asterisk@あーちゃん(プロフ) - コメント失礼致します。凄いです、こんな小説を探していました…!主人公が鉄幹さんなんて、凄く素敵です!! (2019年5月14日 22時) (レス) id: 13131826f9 (このIDを非表示/違反報告)
藍斗(プロフ) - 続編希望です! (2018年7月30日 10時) (レス) id: 2f591e73cb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 1 (2018年7月27日 17時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - 1 (2018年7月27日 13時) (レス) id: 6ed63001fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ペンギン屋 | 作成日時:2018年7月9日 23時

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