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タッキーの言葉にぴくりと反応して、ハーフ顔の男性が悲しそうに自分を指さした
隣に立つ中性的な男性も、これでもかってくらい目を潤ませている
「 ………ごめんなさい、 」
それでも私は、謝ることしか出来なくて
「 ……そっかそっか。また新しい思い出作っていけばいいよ!」
隣にいたガタイの良さそうな彼は、そう笑うとハーフの男の肩をぽんと叩いた
” 新しい思い出 ”
あぁ本当にこれから、やらされるんだ
身代わりとして、彼らと共に
故人に成りすまして、生きていかないといけないんだ
「 早速明日から、って言いたいところなんだけど、大丈夫かな? 」
幸い、今の生活には飽き飽きしていた
楽しいことなんてひとつも無かった
そんな人生なら解放されるというのになら、願ってもない奇跡である
交通事故だったはずの体
思いのほか、動けるのは何故だろう
体の回復とともに目が覚めたのか、だとしたら納得だが
タッキーの有無を言わせその問いに、断る気力も考えもなくて、私は無言のまま頷いた
「 宜しく頼むよ。 」
気分を良くしたのか、タッキーとマネージャーは病室を出ていく
取り残されたのは、笑顔で私を取り囲む男6人
私の記憶力は、すこぶる悪いから
色んなことを覚えていくのに、相当な時間がかかりそうだ
人の名前に、顔に、歌に、ダンス…
それでも何も考えないよりは、マシなのかな
思わず頭を抱えそうになる私
その手を取るのは、残った1人
黒髪の男性が私の目を見て話しかける
「 A、これからまた宜しくね。 」
背筋がゾクリとした
光を失った瞳
貼り付けたような笑み
だけど、その笑顔に違和感を覚えたのは
何故だろうか
この物語は
誰かの身代わりとして、彼らと共に生きていくことになった私の
偽りの1ヶ月間
そして、最期を彩るための
盛大な余興でしか無かった
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momo(プロフ) - 途中で結末がこうではないか、?と予想して見事命中!でも想像をはるか上回る終わり方で、私的にはすっごく好きでした!山場の描写があまりにも綺麗で、歪んだような愛がこんな結末を呼ぶのかと思い、悲しくも何故か美しいと思っちゃいました、! (8月27日 20時) (レス) @page42 id: 7c710f6426 (このIDを非表示/違反報告)
美久(プロフ) - タイトルは何度もお目にかかっていましたが、小説を探していて読んでみようと読み始め、ラスト鳥肌がたちました、、とても面白かったし、感情移入してしまいました、、好きな人となら、心中できるかな…と考えてしまうくらい、恋愛って様々だなって思いました。 (2021年5月17日 22時) (レス) id: b2030bb904 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - すごかったです…。 (2021年5月6日 2時) (レス) id: ef87b188ff (このIDを非表示/違反報告)
りりあ(プロフ) - 鳥肌が立ちました。そして涙が止まりません。表現一つ一つが印象に残りました。こんなにも夢中に読み進めてしまう作品は初めてです (2020年12月5日 23時) (レス) id: 939a9ff57f (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - ハッとさせられる作品でした。 (2020年9月13日 2時) (レス) id: ddea58931a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:FON | 作成日時:2020年8月10日 5時