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8 私のお父さん ページ9




病院で夏油さんたちに会ってから五日ほど経った。

部屋の姿鏡で自分の姿を見る。そこには夏油さんや五条さんと同じような、黒い制服を身につけた私がいた。

セーラー丈位の少し短い上着に、プリーツのついた膝丈のスカート。


『んー、よし!ちゃんと着こなせてる。……今日も“あの夢”見たな』


目が覚めてもくっきりと鮮明に覚えている夢。しかも五日連続。

夢は……多分、前世のもの。何となく確信できる。けど内容は初めて見たやつとは違って、穏やかなものばかりだった。

夏油さんとカフェに行ったり、買い物に行ったり。たまに五条さんも含めて遊びに行ったりもしてたな。……あと“硝子”って女の子とも仲良く話してた。

でも、今日の夢は最悪だった。──お父さんが、リビングで首を吊って自 殺していた。

前世でもお父さんにとって私は、ただのストレス発散のサンドバッグ。……だけどそれだけじゃ、ストレスは発散できなかったみたい。


『私が家を出て行けば自 殺なんて選択肢は無くなるはず……』


きっと自 殺の原因は私。……お父さんの事は嫌いになれない。だから、救いたい。

幸い、今世は呪術というものを授かったから、家から出て生活ができる。


『……よし』


今日、お父さんに手紙を書こう。最後くらいはきちんとお礼を言いたい。

予めまとめていた荷物を手に持ち、緊張で徐々に高鳴る鼓動を感じながら部屋を出た。

階段を下りて、荷物を抱えてリビングへと向かう。そろそろ迎えの車が来てくれる時間だ。

お父さん、今日はお仕事お休みだからまだ寝てるよね。



……え。いた、お父さん。こんな早い時間からソファーに座ってニュースを見てる。嘘でしょ…。よりによって起きてるなんて……。

今はお酒を飲んでいないみたい。お酒を飲むと暴力的になるから、話しかけるなら………飲んでいない今がチャンスだ…!


『……お、お父さん。そろそろ高専に行くね』

父「あ?……あぁ、そうか。てか話しかけんな。こっちはテレビ見てんだよ」


恐る恐る声をかけるが、テレビを見ているお父さんはこちらを見向きもしない。前世でもずっとこんな感じで、相手してくれなかったな。

……鼓動がうるさい、静かにして。

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作者名:無名 | 作成日時:2021年1月2日 3時

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