今世の花火は嫌いじゃない (ページ3)

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２あふれる涙ページ3

私を庇うように立っている黒髪の男性。

彼は糸で動けなくなった化物に手をかざすと、化物からみるみる黒い何かが吸収されて、化物は黒い玉になって姿を消した。

それと同時に、糸を操っていた化物もスッと霧になって消えてしまった。

……私、助かったの？

『ぁ……た、助かったぁ……』

化物が消えて安堵の息を吐く。すると男の人は焦ったように私に駆け寄ってきた。

？「君、大丈夫か！………左目が…」

『あ、目……大丈夫…です』

？「全然大丈夫じゃないよ。だって君………泣いてるじゃないか」

『え？』

私は左目を押さえている手とは反対の手で、自分の頬を触れる。……すると暖かい涙が、溢れだした。

な、なんで？確かに左目はすごく痛いし、化物も体が動かなくなるくらい怖かった。

……だけど、この涙は違う。死ぬのが怖かった訳じゃない。心底嬉しくて、流れ出した涙だ。

『あれ…なんで泣いて……？』

なんでこんなにも嬉しくて堪らないんだろう。生き延びれたから？……そうじゃない気がする。

？「……すまなかった。私がもっと早く君を見つけていれば、怪我を負わなかったかもしれない。急いで手当てをしよう」

『あ、ありがとうございます……ッ』

？「……足首も怪我しているね。少しの間、我慢してくれ」

『え、わっ…?!』

私が自力で上手く立てないのを見兼ねた彼が、軽々と私を抱え上げた。それも、怪我に響かないように配慮してくれている。

……どれだけ力持ちなの？女とはいえ、育ちきった高校生をそんなに軽々と持ち上げるなんて。

『あの!じ、自分で歩けますよ!恥ずかしいから降ろして…!』

？「抵抗できる元気があるなら良かった。でも君、歩けないだろう?」

『……ありがとうございます』

そう言うと彼は優しく微笑んで、路地裏を進んで行く。彼の体温は暖かくて心地いい。

彼の足音とともに私は眠気に誘われ、左目の痛みも忘れて目を瞑った。