弟の婚約者 ページ23
「ごめんね…やっぱり今、仕事辞めることはできない…」
裕『…そっか…』
あの時そう言って自分で決めたのに
会えない日が続くと
やっぱり寂しいし、不安になる
客足の途絶えたカウンターにボーッと立っていると
俊『お疲れー、てか高橋さんボーッとし過ぎですよ』
そう言いながら俊ちゃんが入ってくると
ミ『あー玉森さん、お疲れ様でーす』
ケースのディスプレーしていたミホちゃんが、嬉しそうに近づいてきて
俊ちゃんに一生懸命尻尾振ってるんだ…
ホントこの子わかりやすい
「ミホちゃん、今仕事中！今は何やるべきなの？」
ミ『はーい』
シュンてして上目遣いに見てくるけど、まだ新人研修中
心を鬼にして厳しくしなくちゃなんだもん
ミホちゃんがまたディスプレーに戻ると、俊ちゃんがそっと近づいてきて耳元で
俊『今晩ご飯食べ行こうよ』
まただ…この人私が弟の婚約者って自覚ないのかな？
だから左手の薬指を見せながら
「玉森さんこれ…と言うか今日仕事終わったら真っ直ぐ玉森君の所へ行く予定なの…」
俊『えーてか平日なんかに行ったってアイツも仕事なんじゃないの？』
「今朝メールが入って
昨日から体調悪かったんだけど今朝起きたら熱出ちゃったってSOS入ったの」
こんなとき傍に付いててあげられないとか、ホントダメな彼女だよね…
やっぱりあの時の決断は間違ってたのかとか考えちゃう
俊『ﾊｧそっか…
最近さぁ俺女っけ全くじゃん！だからかまわりが凄いうざくて…
ちょっとでも女の陰見えれば静かになるかなぁなんて考えてたんだけど…
裕太んとこ行くんなら頼めないね』
なんて言ってくる
この人弟の婚約者に彼女の振りしろとか考えてたの？
でも俊ちゃんと歩いててもまわりは全く違和感ないらしい
そりゃそうだよね
だって真面目に定職付いたお陰で
髪色を暗くして短くしたら
玉森君にしかみないもん…ま、私は見分ける自信あるけどね…
「ごめんね…彼女の振りは絶対無理
俊ちゃんと喋ってるだけで、先輩や後輩、同僚からも叩かれるんだから…関わりたくない」
言っちゃった
でもホントにそうなんだもん
それに私は玉森君の彼女、婚約者だよ
俊ちゃんの彼女とか勘違いされること事態、絶対ダメなこと
私が玉森君の立場だったらやっぱりやだもん
とか考えつつ
頭の中では突然行ったら玉森君喜んでくれるかな？なんて妄想しているイタイ私がいたりして…
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作者名：yukiっち
| 作成日時：2017年10月22日 1時
