10話 ページ12
いつもどこか遠くを見つめている御黒さん。
運動も勉強も出来て、真面目で、ついでに顔もいい、完璧なコ。
視聴覚室の扉を開けた瞬間、一瞬で彼女を視界にとらえる。
開けていた窓から風が入って、彼女の短くなった髪が舞った。
黒髪ロングの時にはなかった綺麗さがあるって、思う。
「…御黒さん、落とし物やで」
俺がそう言うと、顔を上げ、落とし物？と首を傾げる。
そして俺の手元にあるリボンを見て、一瞬表情が曇る。
しかし、すぐにいつもの通り真顔に戻った。
「ありがとさん。 全然気づかんかったわ」
立ち上がり、こちらに近づいてくる御黒さん。
俺も彼女に近づき、そしてリボンを手渡す。
受け取ったあとも、またありがとう。 と言うあたり、本当真面目な子なんだと思う。
「お礼と言っちゃなんだけど、お菓子食べる？」
オレオやけど。
そういって俺の反応を見る御黒さん。
食べ物が全般的に好きな俺にとっては甘美な囁きやった。
「……食べる」
俺がそう言うと、ちょっと待ち、といって御黒さんはバッグを漁りに行く。
小さい彼女の背中。 前下がりの髪、後ろは首がはっきりと見えていてなんだか色っぽく見えた。
そして突如、先生に言われたことを思い出す。
――――『兄弟そろって御黒ちゃん好きかあ』
……アカン、変に意識してしまってる。
別に、恋愛での好きやない。
友達ってわけでもないけど、人として…くらい。
そんなに関わりないけど、彼女のことを見ているのは、侑の願いを聞いているだけであって―――
もやもや、ぐるぐると変な感情が渦巻く。
それに加え、無言という気まずさもあって、俺は咄嗟に話を切り出した。
「そ、そういえば、なんで髪切ったり染めたりしたん？」
俺がそう言うと御黒さんの動きがピタリと止まる。
あ、アカン、そう言えば朝これ聞いて一瞬怒っとったんよな。
地雷踏んでもうたかもしれん、そういうと、御黒さんは頭を掻き、うーん、と声を上げる。
「…変？」
思ってもみない言葉を返され、え！とキョドる。
いつも疑問を疑問じゃない風に返す御黒さんが疑問文に(？)。
俺は、えっと、と言葉を返す。
「変やないで。 けど、ほら、前めっちゃ長かったし、その、綺麗やったし」
“綺麗”
自分で言っていて恥ずかしくなる言葉。
ああ、なんやろ、むずむずする。
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彼岸花(プロフ) - たまごぼーろ。さん» ファッ!!ありがとうございます!!消さないように大いに進めていきます…!! (2018年6月30日 6時) (
レス) id: 1f046206e1 (このIDを非表示/違反報告)
たまごぼーろ。(プロフ) - 新作おめでとうございます！！今回も面白くなりそうですね！更新頑張ってください！ (2018年6月29日 7時) (レス) id: acb2629ba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼岸花 | 作成日時：2018年6月28日 23時
