【syp】君の温もり。 (ページ6)

今日:13 hit、昨日:9 hit、合計:13,754 hit

もページ6

気まずい雰囲気。

それを破ったのは、、。

妻の、A。

『私のことやっぱり飽きた？』

「何言って」

『飽きるよね。欲もなくなっちゃうよね。私、知ってるよ、貴方がキスしてるの。若いもんね、あの子。私よりも、若くて可愛くて、そっちの方が好きでしょ？』

違う。そう言いたいのに、言葉に、口に出せなかった。

普段人前では泣かない妻が、今目の前で、泣いているのだから。

どうしても口にすることができないまま時は過ぎる。

『ねぇ、私達。』

ゴクリ

俺は次の言葉を待つ。

いや、怖くて待ちたくなかった。

何故なら、自分は次の言葉が分かってしまってるから。

「俺は、Aのこと」

『離婚』

スッ

『しましょう。』

「ｯ....」

やっぱり俺は何も言えなかった。

飽きたから浮気をしたんじゃない。
いつも仕事に追われているAに"構って"なんて言えなくて、迷惑だと思われたくなくて、他の女とその寂しさを埋めた。

その事実さえ、言えなくて、俺は黙ることしかできない。

もっとAに“構ってほしい"と言えてれば、Aを泣かせることなかったのに。俺は何やってるんだろ。

『離婚届、書いてくださいね。貴方の名前と印を押せば成立しますので。よろしくお願いします。』

俺が書くところ以外は全て書かれている離婚届。

これを書いて印を押すと成立してしまう。

どことなく悲しかった。

いや、悲しいのはAだ。
2年も一緒にいて、休日以外は他の女といる。
俺も妻だったら耐えられずに離婚する。

『ありがとう、ショッピ。そして、愛してる。さようなら。』

そう言ってAは、振り返ることなく家を出て行った。

俺は結局、最後の最後まで何も言えずに黙っていた。

出て行ってしまったAには届くはずもない言葉を俺はそっと

「俺も愛してる」

そう呟いた。