第五章第十二話 ページ42
ビスケは私をじっと見つめると「なーに言ってんの！」と呆れた表情をした。
「あんたはもうネテロに散々叩き込まれたんだろ？あんたは念に関しては何も言うことないよ。」
「念に....関しては？」
「そう。」と言うとビスケは私の胸に手を当てた。
「あとは気持ち。」
気持ち....？？
「あんた、戦うとき多分勝てるとか、負けるかも....とか思って戦ってるでしょ？」
図星だ。その通りだった。
私は一度も絶対勝てるなんて思って戦ったことはない。
「強さは、気持ちも大事なの。あんたが何か修行したいっていうなら、あんたの修行はまず自分の強さに自信をもつこと！それ以外はあたしのアシスタントだからね！」
ビスケは私の胸から手を離す。
「うん、わかった。ありがとうビスケ！」
自分は強い！という気持ちを胸に、私はゴンとキルアを応援した。
★
[ビスケ目線]
ゴンがダイヤモンドでキルアがサファイアとしたら、あんた、Aはエメラルドよ。
鮮やかな緑色で、見るものの心を癒す優しさを秘めている。けど、その分危うくもある。
衝撃に極端に弱いのだ。
そしてエメラルドには内部の傷があり、多すぎるとその傷は、オイルや樹脂に浸すなど化学処理をして隠す。
嫌なところは見られないように隠し、綺麗なところだけ見せる。
「自分の強さを信じることも大事なんだけど、相手を信じることも学んだ方がいいかもね〜。」
「え？なんか言った？」
「何でもないよ。」
そうこうしてる間にも、もうあの二人はビノールトの力を越えていた。
★
十日後、ビノールトを一対一でも倒せるようになった二人。
ビノールトは自分に勝ち目がないとわかり、地面に膝をつき降参する。
「ビノールトさんありがとう！おかげで俺達すごく上達しました！」
礼儀正しいことで...。お姉さん嬉しいわ。
ペコリとビノールトにお辞儀するゴン。
「ここを出たら自主する。それで見逃してくれるか....？」
「行きなさい」
少し考えたあと、ビスケはそう答えた。
ビノールトは立ち上がると街がある方へと歩いていった。
「あんたはじめからこのつもりだったのかい？相手は第一級殺人犯だわよ？」
「でも、教わったのは俺達のほうだし」
彼らもまた、危うい存在であることをビスケは知っていた。
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作者名：焼き肉 | 作成日時：2019年9月16日 17時
