第四章第二十六話 ページ26
[キルア目線]
これは、たぶん夢だ。
瞬時に思った。
町は妙にリアルだが、そこら辺にいる人物がぼやけてよく見えない。
それにふわふわとした、そんな感じだったから。
夢を見るということは眠りが浅いこと。
最近修行ばっかだったから疲れてんだろーな、俺。
ふらふらと町を歩くと見覚えのある背中。
Aだ。
「おーい、A！」
名前を呼ぶとパッと振り向くのだが、振り向いたのはAだけじゃなかった。
隣の、知らないやつ。
顔がぼやけてて、よく見えないが体格的に男だというとこくらいわかる。
「キルア！」
Aはその男と一緒に俺のところまで来る。
「....そいつ、誰？」
一応聞いてみる。まー、夢だけど、一応、ね。
するとAはさっきまでの表情とは別で、少し照れた表情で俺に言った。
「そういえば、キルアには言ってなかったね。お付き合いしてる男性なの。」
Aはそう言うとその付き合ってるとかいう男の腕を掴み、幸せそうに笑う。
「彼とは結婚を前提に＿＿＿＿＿。」
話が入ってこない。
嘘だろ？
いや、これは夢。落ち着けよ俺。
けど、
Aの匂いや、笑顔がとてもリアルで、現実のようで....
「キルア？」
「え！あ....そ、それで？」
「うん、これからは彼と旅することにしたの。」
ガツンと誰かに殴られたような衝撃が俺の頭にきた。
さっきまで綺麗だった町や空が、真っ黒になっていく。
「じゃあね！バイバイ！」
嫌だ
行かないでくれ
どんどん遠ざかっていく二人を追いかけようとしても、なかなか前に進まない。
足が思い、スローモーションになったみたいだ。
お願いだから行かないでくれ！！
俺は、
Aのことが....！！！
「好きなんだよっ！！」
★
「キルア！キルア！！！」
はっと、目が覚める。
目の前には汚い天井と、それと対する綺麗なAの顔。
Aは心配そうに俺を見つめていた。
ゆっくりとベッドから起き上がると汗がびっしょり。
「怖い夢でも見たの？」
Aは自分のポケットからハンカチを取り出し、俺の額から汗を拭く。
「差し入れ持ってきたら返事なくて、勝手に入ったらキルア魘されてるんだもん。ビックリした。」
差し入れのビニール袋の中からスポーツドリンクを出し、俺に渡す。
「あんまり無理しないでね。」
そして俺の頭をポンポンと触った。
そのとき、夢のことを思い出す。
「Aはさ、」
「好きなやつとかいんの？」
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作者名：焼き肉 | 作成日時：2019年9月16日 17時
