第三章第九話 ページ19
[キルア目線]
俺達が二百階に戻ってきたとき、どこか可笑しかった。
それはゴンもわかっていた。
だから俺の部屋の前に来たとき、中に連れ込み、問いただした。何があったのかを。
教えてくれたのはいいものの、やっぱりいつもと違う笑顔に違和感を覚えた。
その時、あることを思い出す。
俺の部屋で兄貴とAが話していた内容だ。
☆
「私の愛され方はこんな感じでした。ぎゅっと抱き締めて貰って、頭を撫でてもらいました。」
「そんで、駄目なことをしたときは、おでこにデコピンされました。」
☆
Aが愛して貰ったのは両親と村の人。
だとしたは四年はこうされてないんじゃないか？
Aは、ずっと耐えていたのか....？怖いときも苦しいときも....誰にも言わず、見せず....ずっと。笑ったり怒ったりして誤魔化して。
俺はぎゅっと抱き締めた。
年上の、ましてや女にこんなことするの初めてだったからどう力加減をしていいか分からず、ただ、優しく....優しく触った。俺の方が背が小さいから、Aに屈ませながらも。
「....怖かった。ほんとに殺されるんじゃないかって。」
そう言うと肩にポロポロと温かい物が落ちてくる。涙だ。
Aは今、泣いている。
「キルアぁ〜私、もっと強くなりたいよ..！」
わんわん泣きじゃくるAの姿を始めてみたもんだから、どう慰めていいのかわからず、「一緒に強くなろう」と言うと安心したのかだんだん落ち着いていき、しまいには寝てしまった。
「まじかよ。」
俺はAを抱えてベッドに寝かす。
肩にかけていたバッグはAから取り、椅子に置いた。
スースーと寝るAの姿はまるで子供のよう。
泣きあとを親指で拭うと、「ん」とくすぐったそうに寝返りをうつ。
まて....
まてまてまて！！！
なんだこのドキドキは！！？
なんでこんなに顔が赤くなるんだ！！！？
相手は二十一だぞ！！！俺は十二！！九つ離れてるんだぞ！！
あれだ！姉貴なんていなかったからな！
接し方がわからねーだけ！そう！初めてなんだ！
だからこんなにも....
こんなにも....
Aのことを思うと胸が収縮するみたいにキュッとなるんだ。
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作者名：焼き肉 | 作成日時：2019年9月1日 14時
