別れたあなたに/渋谷 ページ3
「A…ごめん……」
理由は聞いていない。
引き止めることもできず、わたしは頷いた。
だってわたしには引き止める権利すらないから。
すばるさんとは会社で知り合った。
5つも後輩のわたしに、対等に接してくれる先輩で、仲良くなって、飲みに行く仲になった。
すばるさんには、わたしの3つ上の可愛らしい彼女がいたし、好きにならないつもりだった。
けど、お互いに調子に乗って飲みすぎた日に、一線を越えた。
絶対に越えたらいけない一線だったと思う。
だけど、お互いに何を求めていたのかすばるさんとわたしは恋人未満の関係になった。
なんでわたしといるんですか？って聞いたことがある。
「好きやからやろうな？そりゃ。Aとおんの安心すんねん。」
そう言って笑っていた。
その瞬間にわたしのギリギリで保っていた心はすばるさんに堕ちたのだ。
すばるさんが彼女さんとうまくいってないというのは、社内では有名な話だった。
「あいつは仕事もできひんし、束縛激しいし、わがままらしいからな。すばるは仕事の話とか好きやろ？けど、あいつは仕事の話すると全く話さんくなるらしいからな。」
すばるさんのことならなんでも知っている同期の村上さんからそんなことを聞いたこともある。
だけど…
「山田ちゃん…すばる…彼女と結婚するらしいで？」
村上さんから聞いた話。
やっぱりかという思いと、なんで？という思いが交差する。
でも涙なんて出てこない。
「そうなんですね！結婚式はさすがに行けないなぁ」
なんて軽口を飛ばせるくらいには元気。
でもね、すばるさん。あなたのこと、本気で好きだったよ？
あなたが嫌いって言うから、やめてたタバコもまた吸ってるし、派手めなメイクもやめないよ。
あなたは、今頃薄化粧だけでも可愛い、タバコも酒もやらない彼女といるんだから。
あなたに嫌われるくらい、自由にさせてよ。
「Aはタバコも酒も似合うからええねん。俺はそういうとこ好きやで？」
……END……?
(なんで今更そんなこと)
(ええやんけ。俺らの仲やろ)
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作者名：ちい | 作成日時：2017年9月24日 13時
