JAM LADY/錦戸 ページ12
同僚に連れられてクラブに来たけど、若い頃みたいにガツガツ遊べる歳でもなくなったことを実感しとる。
目の前にいる女たちはみんな男を探しとって、俺らのことをチラチラ見とる女もおる。
爆音でEDMがかかる中、比較的堅い格好をして手帳とスマホ片手にスーツの男性と話す女性に目がいった。
仕事なんかも知らんけど肌を見せて誘ってくる女の中で彼女だけが凛としていた。
「1杯飲みませんか？」
打ち合わせが終わり帰ろうとした彼女を引き留めていた。
「え…あーいいですけど…」
不審そうに俺を見る。仕事で来てたんに突然話しかけられたらそりゃ不審がる。
「あ、俺、エイト商事で働いてます、錦戸と申します。」
あえて名刺を差し出した。こっちの方が安心感あるやろ？
「あ、頂戴いたします。私、雑誌などでスタイリストをしております、山田Aと申します。」
彼女は丁寧に名刺を交換してくれた。仕事ができるって感じで好感度が上がる。
そこから話は弾み、Aさんは雑誌のイベントでこのクラブを使うため、照明やスペース、平日の夜の客の入りを見に来たと説明してくれた。
「錦戸さんはクラブとかよく来てそうですよね」
「え！？いや、学生時代は来てましたけど…社会人になってからは初めてですね…数年ぶり？ですね…」
ふーんっていいつつAさんは笑ってる。俺とAさんはその後かなりの量を飲んだ。
「亮ちゃん…って可愛くないですかぁ？」
酔っ払ってるAさんは仕事中の凛とした姿からは想像もつかないくらい幼くて可愛かった…こんなん、誘われてると勘違いしても知らんで？
「なぁ、ちょっと抜けへん？」
そう言ってAさんの腕を掴むと夜の街へ繰り出した。
タクシーでワンメーターの距離に家があるためAさんを家に連れ帰る。
こんなつもりやなかったのになと笑いが溢れる。
可愛すぎるのがあかんねん。
ベッドに寝かすと、Aさんはすーすー寝息を立てている。
俺も部屋着に着替えてAさんの隣に寝る。
するとぎゅっと抱きつかれた。ほんまに可愛くて、寝顔を見つめているうちに俺も寝てしまった。
次の日の朝、Aさんはおらんかった。
その代わり、サイドテーブルには、
『昨日はありがとうございました。よかったらまた、飲んでください。p.s.寝顔可愛いですね』
のメッセージと、LINEのIDが添えられとった。
俺はこの子にハマる予感しかせん。
(手を出さないなんて、いい人ですね？)
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作者名：ちい | 作成日時：2017年9月24日 13時
