検索窓
今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:10,207 hit

ページ4

なにも、逃げることもなかったんだろうけど…。

そう、今になれば充分反省できる。
だけど、桃子はポーカーフェイスとか平常心とかそういうのが一番苦手。
できない。
だから、思ったことが全部顔に出ちゃうし、口にも出ちゃう。

泣いてる顔を見られたくなくて、なんとなくうつむく。

田舎育ちで歩くのが早くないから、どんどんみんなに追い越されていく。


「いって!」

肩あたりに軽い衝撃が走る。
どうやら人とぶつかってしまったらしい。

「ごめんなさ…」

ほぼ条件反射で顔を上げた。

やばい。
気を抜いたら声に出てしまいそうだった。
いかにも柄の悪いお兄さんとぶつかってしまった。
都会の人は怖いから怒られるかもしれない。

「ちゃんと前見て歩きなよー」

怒っているわけではないようで安心は安心だけど…。

「え、てかめっちゃ、可愛いね」

ちょっと違う方向にまずいことになってる?

「一人?暇?」

矢継ぎ早に発される男の言葉に気圧されながら少し後退りする。

桃子、知ってる。
これ、ナンパってやつだ。
ドラマとかで見たことあるけど、ほんとにこんなことってあるんだな。


って、感心してる場合じゃなくて…。

「だったら、遊ぼーよ」

なれてなさすぎて、「あ…」とか「え…」とか情けない声しかない。

「だめ?」

なんか怖い。
やっぱり、都会って怖い。
目頭が熱くなるのを感じる。





「すみません。こいつツレです」

そんな聞き覚えのある声が投げ掛けられる。

「ひ…日野先輩…」

気づけば、肩を引き寄せられ、日野先輩の腕に収まっていた。

日野先輩がイケメンだったためか、中途半端なチャラ男は顔をひきつらせて、「あーね」なんて勝手に納得しながら歩き出す。

悔しいけど、今回ばかりは助けられた。

「はぁー」

後ろから、日野先輩の盛大なため息が聞こえてまた涙が滲む。

安心したって涙と日野先輩なんかに助けられてもっていう涙。

それからダメな自分にたいする悔し涙。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (15 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
11人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:女だぬき | 作成日時:2019年7月20日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。