恋愛未遂 (ページ3)

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side 日野龍樹

「龍樹って絶対、桃子のこと好きだよね？」

練習後、私服に着替えてロビーでぶらぶらしていたら同期の女子にニヤニヤしながらそんな問いを浴びせられた。

一気に顔が熱っぽくなるのを感じた。

こんなのイエスっていってるようなもんだ。

「は？なんで？」

「だって、明らかに桃子に意地悪しすぎでしょ？なんか好きな子構う小学生みたいな？」

いや、そうだよね。
自分でも思うよ。
だけど、桃子見てるとなんかいじりたくなっちゃうっていうか。
そうすると、どんどん桃子に距離置かれるんだけど、そういうの見てるとまたイライラして意地悪くしちゃったり。

「やっぱ、龍樹は桃子のこと好きなんだ」

桃子って田舎育ちもあってか、『ザ・うぶ』だから俺の気持ちに気づいたりしたらそれはそれで混乱するか。

「なわけねーだろ。お前こそ小学生みたいなこと言ってんなよ」

「えー？そーなの？」

否定しておくにこしたことはないな。
桃子は可愛いと思うし、気になってるに変わりはないけど。

「桃子って田舎くさいし、どんくさいしさ、あーいうのにそそられる男ってなんなの？」

同期の女子は何故か俺の肩あたりを見つめたまま、まずいという顔で固まっている。

「え？なに？」

何の気なしに、その同期が見つめる先を振り向いた。

「桃子、もう帰りたい」

ロビーにそんな小さな声がポツリと響いた。
俺のすぐ後ろには涙目の桃子が一年の美波に肩を抱かれながら突っ立っていた。

桃子の丸みを帯びた小動物のような目からポロポロと涙がこぼれた。

桃子は泣き虫で良く泣くのだけど、ここまで大泣きするのはなかなかなくて言葉を失った。

「あ！桃子！」

桃子は美波の手をすり抜けて猛ダッシュで出入口のほうへ逃げ出してしまった。

「え？桃子どうしたの？いっつもあんな泣くことないよね？」

今の俺、相当余裕ないだろうな。
ダサいなと思いつつも聞かずにはいられなかった。