恋愛未遂 (ページ2)

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「もう、龍樹先輩嫌い」

練習後ロッカールームの中、同期の美波にぼやく。
美波は苦笑いで「まぁまぁ」と曖昧に笑った。

「龍樹先輩、悪い人じゃないと思うけどな」

美波は意地悪なこと言われてないからわからないんだと思う。
そりゃあ、美波は生まれも育ちも名古屋でこなれていて、モデル体型で、あか抜けているから、日野先輩もからかわないんだろうけど。

「桃子のこと嫌いなら桃子に関わってこんかったらいいのに」

言ってしまってからなまっているのに気づいてこういうところだろうなと思う。

「いや、嫌いではないでしょ？むしろ気に入ってるようにみえるよ」

「ないないなーい」

首をブンブン横にふる。

「嫌いだったらわざわざ構わないって」

美波はなんにもわかってないからこれ以上言っても無駄。私は口をとがらせて抗議を諦める。

あと数週間後にはママに会えるから、そのときにおもいっきり愚痴るし、甘える。

「ママに早く会いたい」

もともとママ大好きなタイプだったけど、こうやって都会に出てからは尚更だ。

今月、帰る約束してるから楽しみで楽しみで仕方がない。

「桃子、帰省するの？」

「うん！１日だけ」

「そうなの？じゃあ、練習休むの？」

「練習は休めんから、オフの日に帰るようにしとる」

美波はおもむろにリュックから部活の日程表を出し始めた。
そして、不思議そうにその紙を見つめた。

「桃子平日に帰るの？」

「平日は大学だし、土日に帰るようにしとるよ」

「え、でも…」

美波の細い指に目を落とす。
その先には土日にびっちりと練習時間という文字とともに練習日程が埋められていた。

「え、なんで？かして？」

美波から半ば強引に日程表を奪い取ると食い入るように日程表を見つめる。

「だって、この日１日オフじゃなった？」

美波はその問いに８月の日程表を指差した。

「桃子、８月と勘違いしてない？７月は土日にオフはないよ？」

その言葉にまた、涙が滲んでくるのを感じた。
そんなことってある？
ママと会うのだけを楽しみに必死に練習してきたのに。

「え？桃子？」

美波は困ったような顔をして桃子の顔を覗きこんでくる。