検索窓
今日:10 hit、昨日:32 hit、合計:189,159 hit

10:食い違い。 ページ10

.





「お、やっと起きたね」


『……貴方は、探偵社の、、』





Aはしばらくして目を覚ました。




何故此処にいるのか、少し戸惑っているようにも見えた。





「与謝野晶子、探偵社員だよ。ほら、これでも飲みな」


『ありがとうございます、与謝野さん』





Aはそういえば名前は聞いてなかったな、と呑気なことを考えながら、出されたホットミルクに口をつけた。




与謝野はその様子を見て、安心した。




どうやら意外と落ち着いているらしい。





『あの、何故私は此処に?』


「アンタが出て行ったのをウチの社員が追いかけてってね。それで連れて帰ってきたってわけだ」


『見ず知らずの私を?』





Aは不思議でならなかった。




彼女は川に飛び込んだのだ。




つまり、彼女を連れ帰った人物だってそうしたに違いない。





「今度は入水かい?」


『気づいたら、そんな気持ちになってました』


「ふうん」




ヘラっと笑う彼女に、返す言葉が見つからない。




ましてや、どうせ死ねないのに何故?、だなんて聞けるはずがなかった。





根拠がなくとも、聞いてはいけない部分だと思ったのだ。





「太宰が話したいと云っていたんだが、今から大丈夫そうかい?」


『太宰さんが?』





Aは眉をひそめた。




此処で出会った時、彼らはまともな会話をしなかった。





きっと二人の間には何かがある、そう与謝野は思った。





『与謝野さん』


「ん?」




与謝野を呼んだAは、無表情だった。





『太宰さんは私のこと、恨めしそうでした?』


「…そんなこと、無かったよ」






何故そんな言葉が出てくるのか。




太宰はAの事を心配していた。




彼らはどこかで食い違っている。






『あの人はきっと、、私を恨んでる』





Aは泣きそうに笑った。





「大丈夫。考えすぎなだけさ」






何も知らない与謝野は、ただそう云うことしかできなかった。






.

11:心の距離。→←9:自己紹介。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (408 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
473人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。