8:原因と理由。 ページ8
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「元よりそのつもりだ」
国木田の言葉に、皆が頷いた。
太宰は安堵し、微笑んで礼を告げた。
「ところで、Aさんの異能ってどんなものなんですか?」
賢治の質問に、太宰は腕を組んで小さく唸った。
「それが、結構厄介な能力でねぇ」
口で伝えるより、見た方が早い。
そんな複雑な能力なのだが、説明しないわけにもいかない。
太宰は珍しく頭を悩ませながら答えた。
「大まかに云うと、"自身の命を守る能力"だ」
ただ、発動するのにはある条件があった。
自ら衝撃を与えたり、誰かを庇った時だったり、自らの意思で衝撃を受けた時しか発動しない。
つまり、不意打ちには全く意味をなさない。
「どんな衝撃でも?」
「そこが落とし穴なのさ」
谷崎が不思議そうに云うと、太宰は指を一本立てて続ける。
「即死する程のものは"無かったこと"になり、死に関与しない程度のものはそのままになる」
そして、放っておくことによって死につながる程のものは、ある一定ラインを超えると傷の進行が止まり、それまでの傷と痛みは残る。
「面白いほど面倒な能力だねェ」
「昔、本人も使い方に悩んでいました」
今朝、飛び降りたのに無傷であったのは、『自らの意思』と『即死』か絡んでいたからである。
衝撃自体が、"無かったこと"になったのだ。
「不意打ち以外では死なないとはいえ、治癒能力ではない」
できた傷は治癒されるわけではなく、痛みがこないわけでもない。
彼女の異能が発動されることは、決して善い事ではない。
悪い条件が揃っての話だ。
だからこそ、Aが異能を使うのは望まれる事では無かった。
「それを知ってもなお、アレなわけか」
彼女は死ねないことを知っていて、飛び降りた。
苦しんでいた様子から、本気だったことが判る。
そうせざるを得ない何かがあったのだ。
と、此処でAを背負った敦が戻ってきて、社内は慌ただしく動き出す。
入水を試みただろう彼女を見て、太宰は深い溜息をついた。
「太宰」
「はい?」
全てを黙って聞いていた乱歩はゆっくりと口を開いた。
彼は、もう、判っている。
「原因は判っているんだろう?」
「えぇ、判っています。あの子の心があんな風になってしまったのは、」
きっと全部、私のせいなのです
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時