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28:本当の心。 ページ28

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「ごめん、本当にごめんね」




Aを起こし、抱きしめると、ずっと云えなかった言葉が簡単に口から出た。




金属音を鳴らして短刀は地面に落ち、私の背中に手が回される。





昔と、何ら変わりなかった。





泣きじゃくるその様子も、何もかも。






『織田作さんも、安吾さんも、みんなみんないなくなっちゃって、』


「…そうだね」





仲間想いで、織田作を失ったことを一番嘆いていたA。





四年前のあの事件で、失ったものは多かった。





『太宰さんまで、いなくなっちゃって、』


「…あぁ、寂しかったね」






壊れかけたAに手を差し伸べる人物はいなかったのだろう。




私のように、居場所を見つけることもなかっただろう。





『一人じゃ、生きてる気がしなかった』





本当の一人、とはどんなに辛いものなのだろうか。





仲間を得た私には判らない。




そして、Aが死に執着した理由。





『どうにかして、誰かに会いたかった』





Aを捨てた私と、特務課に勤める安吾。





その二人に会うのは容易ではない。





だからこそ、この子は死を求めたのだ。





絶対に受け入れてくれる、織田作に会うために。







「そして君は、私のところに来たんだね」






Aは異能によって、自ら死ぬことは絶対にできない。





だからある目的を持って、私のところに来たのだ。





少しの希望と、諦めを持って。




私が受け入れるという僅かな希望。




それと、突き放されるのならばそのまま殺してもらうという、生に対しての諦め。





それがAをヨコハマへと呼び戻した、唯一の原動力。





『太宰さん、織田作さんの盾になれなかった私を、恨んでますか?』


「恨むわけないだろう」




織田作は私の友人でもあった。




でもだからといって、Aが彼を庇う必要など無かった。




きっとあれが、あるべき道だったのだ。





「A、私が約束を破ったことを恨んでいるかい?」


『全然、恨んでないです』






私もAも、誰のことも恨んでなどいなかった。





全部、食い違っていただけだったのだ。





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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時

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