25:最後の機会。 ページ25
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『与謝野さん、先日はすみませんでした』
「妾も叩いて悪かったね」
次の日、Aは何事もなかったかのようにヘラっとして探偵社に出社した。
「まったく、お前はどれだけ社に迷惑をかければ済むのだ」
『あはは、すみません』
彼女は屈託のない笑顔を見せた。
社員たちはその様子に安心するも、どこか不安を覚えた。
これから何か起こりそうな。
太宰は何も云わず、視線でAを追い、考え込んでいるように見えた。
『ちょっと屋上でその空気吸ってきます』
「早く戻ってきて仕事しろよ」
『はぁい』
皆は太宰を見た。
追いかけなくても善いのか、とそう云うように。
だが、彼は未だ動かない。
「国木田さん、軍警からの応援要請です」
事務員が国木田に声をかける。
福沢が出張中である今は、彼が社長代理である。
故に、全ての連絡は国木田を通すこととなる。
「内容は?」
「此処から一瓩米程離れた建物で人質をとった立て篭もり事件が発生したそうです」
腕を組んで少し考えたのち、国木田は口を開く。
「俺と谷崎で向かう。残りの者は社で待機だ」
的確な指示を伝える。
やはり彼は、人の上に立てる力があるのだ。
「太宰、お前は、」
「国木田くん」
太宰は国木田の言葉を遮った。
漸く、口を開いたのだ。
「今日なら、いけるかもしれない」
確信は、無かった。
それでも、今日を逃したら機会がなくなってしまうような。
そんな気がしたのだ。
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時