22:謝罪の意味。 ページ22
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久しぶりに、Aと手を繋いだ。
昔から、私と彼女はそういうものだった。
特別な感情を抱いているというわけではなく、あくまで友人としての好意。
妹みたいに思ったこともあった。
四年前だってそう。
仕事を斡旋してもらうために種田長官のところに向かう時も、今みたいに私がAの手を引いて歩いた。
子供の時だってそうだった。
事あるごとに泣きじゃくるAを中也と挟んで歩いた。
《Aは一人じゃ何にも出来ないから。私がずっと、側にいてあげる》
《太宰さんがいてくれるなら、安心できますね》
交わした約束は、今も鮮明に思い出せる。
彼女の真っ直ぐな笑みも、何もかも。
それなのに。
今のAは違うのだ。
握った手から感じる、何かに怯えているような様子。
一言も話さず、下を向いて歩いている。
側にいてあげる、自分からした約束を私は破った。
Aのためではなく、私のために。
今となれば、自分勝手な行動だったと思う。
それに、二年ぶりに彼女と再会して感じた。
あの選択は間違いだった。
私は今まで、選択を間違えたことは無かった。
だからこそ、深く考えることを怠ったのかもしれない。
自分が正しいと思い込んでしまったのかもしれない。
「A、ごめんね」
『…何の話だか、判りません』
私が彼女であっても、今の謝罪は何を意味しているか判らなかったと思う。
私はAに謝らなければいけないことが沢山ある。
約束を破ったことも、そのうちの一つ。
あの時選択を間違えなければ、彼女が心を病むことを止められたかもしれない。
ぐるぐると思考を巡らせているうちに。
昔のことが思い起こされた。
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河瀬(プロフ) - 久しぶりに心を締め付けられる作品を拝見しました…!もう涙腺崩壊です(つД`)ノありがとうございました!! (2018年12月28日 10時) (レス) id: 4d532e1b9e (このIDを非表示/違反報告)
かん。 - コメ失礼します! 凄く良作で文才が素晴らしいですね…文才わけて欲しい位です(笑)感動し過ぎて涙が止まらなかったです!! 素晴らし過ぎて語彙力無くなりました… (2018年6月17日 21時) (レス) id: 1ce36ab38c (このIDを非表示/違反報告)
夢らら(プロフ) - 完結おめでとう! (2017年11月12日 13時) (レス) id: 3821086925 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした。すごくメッセージ性のあるお話で、心に残りました。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2017年11月12日 7時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - どんぐりさん» 嬉しいコメントありがとうございます!そう言って頂けると感激して泣きそうです!(笑) (2017年11月12日 1時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月31日 0時